しおの

ヨーロッパ一九五一年のしおののレビュー・感想・評価

ヨーロッパ一九五一年(1952年製作の映画)
2.8
途中これは政治映画かと見えて嫌な予感がしたが、そうではなかったが教条映画みたいな感じでややこしい映画だった。ドラマ部分をみれば最初から構ってやれなかった子供への贖罪のドラマなので、そう思って見るのが一番しっくりくるだろう、と思ったらラストまでみるとそうでもないからややこしい。
結局当時における聖者の姿を描いた映画ということでロッセリーニ監督らしいともみえる。ずいぶんややこしかったのは脚本に複数人がかかわっていることからも伺えて試行錯誤がみえる。すこし内省遍歴じみていて回りくどい言い訳台詞が多かった点も気になった。セレブから共産主義への転身を「エゴイスティックでお粗末」とのちに切り捨てるのはわざとらしくて、むしろプロパガンダに見える。
映像的には印象に残るところが多く、即物性をむきだしに描写した工場のシーンは、物質的な救済は人間の罪の意識の救済にはなり得ないのだということを映像だけで表現していて、こういうところはうまい。「地上の楽園に死者は含まれない」という主人公の気づきにも繋がるうまさもあって映画的。この表現力があるならば説明台詞はそんなにいらないし、劇中には施しの動機を問われて「話すには時間がかかるし、自分でも分からないかも」と答える主人公の台詞もあるのだが、にもかかわらず映画全体で喋りすぎだった。あとはイングリッド・バーグマンの労働者姿が似合わなすぎでこれは笑える。
いろいろな社会批判を込めてのことだろうが、近代以降の社会では聖者は病院に入るしかないと言っているようなのはちょっとさみしかった。病院の最後のシーンは映画的には印象に残る良いシーンでこのシーンが撮りたかっただけなのかなという気もする
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