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乙女の祈りのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

乙女の祈り(1994年製作の映画)
4.0
1952年、ニュージーランド、クライストチャーチ。女子高に通うポウリーン(メラニー・リンスキー)は、イギリスからの美しい転校生ジュリエット(ケイト・ウィンスレット)と熱烈な友情を育む。
ポウリーンは下宿屋を営む低所得の家庭に育ち、ジュリエットは名門大学の学長の娘と、まるで環境の異なる2人だが、マリオ・ランザのオペラ、ヒロイックな冒険物語、ハリウッドの美形スターなど、好みや感性は驚くほど似通っていた。
疎ましい現実を忘れさせてくれるものに崇拝の念を抱く彼女たちの豊かな想像力は、やがて「ボロウィニア王国」という聖なるものたちの物語を生み出した。
作家を夢見る2人は、ジュリエットが肺結核で入院生活を送る間も、文通を通じて何世代にも渡る物語を膨らませていった。
その間、下宿人の1人にポウリーンは処女を捧げる。
彼女たちの意識はますます自身を離れ、この傾向はジュリエットの退院後にいよいよ強まり、2人はフィクションの世界にのめりこんでいく。
娘たちの親密な関係に異常性を感じ取ったジュリエットの父(クライヴ・メリソン)は、ポウリーンの母(サラ・パース)にカウンセリングを受けさせる。
同性愛の診断を下されたポウリーンは、ジュリエットとの交際を禁じる母に激しい憎悪を燃やす。
やがてジュリエットが、両親の離婚に伴って南アフリカに行くことが決定。
母親さえいなければ、ジュリエットと南アフリカに行けると思い詰めたポウリーンは、愛するジュリエットが用意したレンガで母親を撲殺。2人は裁判の結果有罪となった。
後年2人はどちらも釈放されたが、事件後は一度も会っていないという。
1954年ニュージーランドのクライストチャーチで起こった「パーカー&ヒューム事件」を元に、ピーター・ジャクソンが映画化。
病気がちでファンタジー小説好きという共通点からポーリーンとジュリエットは仲良くなり、学校でも家庭でも居場所が無かった二人は、架空の世界の中でファンタジーの妄想に浸り、現実と妄想の境目が解らなくなり、両親の離婚などの現実の辛いことから逃れるように大人や男を排除した夢の世界にますます耽溺して母殺しに手を染めるまでを、カラフルなドレスを身に纏い森の中でファンタジーごっこに耽るポーリーンとジュリエットの姿を、粘土の人形が生き生きとしているファンタジーの世界と現実の二人を違和感なく合成したカラフルなダークファンタジー風に表現するピーター・ジャクソンお得意の描写、大人への軽蔑と若さ故の万能感に満ちたポーリーンとジュリエットのいびつさもしっかり描かれていて、なかなか苦い後味のダークファンタジー映画。
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