囚人13号

ファントマ対ジューヴ警部の囚人13号のレビュー・感想・評価

ファントマ対ジューヴ警部(1913年製作の映画)
4.0
『ファントマ』第二作。

ついに撮影隊はセットを飛び出し、パリでのロケを敢行する。リストアされた画面が120年前の風景を見事に甦らせるが、そこにはカメラの存在に目を奪われている通行人たちがこちらを見つめていたり、明らかに不自然な位置で立ち止まって俳優を眺めている様子が生々しく収められている。
かつてバザンが映画とは時の流れに勝利し、それに防腐処理を施すミイラであると書いていたことが思い出される一方で、本作に見られる違和感、名もなき一般人たちの好奇心によるそれはどこか初々しく微笑ましい。

その後舞台は列車へと移行するのだが密室劇が展開されるわけではなく、複数犯による強盗と、連続活劇には欠かせない連結部分への飛び移り(ここは超短い)からの大事故を見せ、アクションとサスペンスを同時に描出しようと試みている。
あとここで指摘しておきたいのが列車が画面に登場する瞬間、リュミエール『列車の到着』を想起させられることで、列車は静止しているが構図がそれと全く同じ。映画は誕生後18年という期間で様々な技法が生まれたがここだけはリュミエールの奇跡的な感覚に帰結しているのかと大感激した。

夜に灯りを消したら外と同じ青一色に変わる画面、奇想天外という程ではないがどこか小説風な"殺人鬼"、通気孔からの監視など、視覚を刺激して観客を惹き付ける非凡な演出が前作よりも顕著に現れている。
ファントマの全身黒ずくめで目元のみ穴が開いている有名な出で立ちはやはり不気味で、捕まるはずもない"影"を大勢の警官が追っているかのようなラストの追跡とクリフハンガーは正に悪夢。
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