継

つながれたヒバリの継のレビュー・感想・評価

つながれたヒバリ(1969年製作の映画)
4.0
舞台は、共産主義による独裁体制が敷かれたチェコスロヴァキア。

体制に楯突く連中が集められた鉄屑工場。
集められたタイプライターを不要な鉄屑として破壊するシーンが象徴的で、
延々と続く単純作業は不要な言論や思想を砕いて溶かし、体制に合う形へ鋳造し直そうとするかのよう。

『スイート・スイート・ビレッジ』の16年前、厳しい冬の時代の祖国を描いたイジー・メンツェルの作品です。

男達が作業の傍ら色目を使う隣のエリアでは、
亡命を試みて失敗した女性達が同様に強制労働を強いられていますが、
メンツェルが描くこの男女の労働者たちはやっぱりと言うか、張り詰めた緊張感とか全然なくて(笑)。
体制の宣伝映画を撮りに来たクルーの前で “ストライキ決行!( ̄0 ̄)/ ”とか平気で言い出す始末。

政治的テーマを怒りや悲しみでダイレクトに訴えても、それは時に人の目を背ける事になるのをメンツェルは心得ていて
ほのぼのした笑いや本能的な性愛で先ずは人目を惹き、タイミングを見計らってはカットのあちこちにテーマをヒットさせる... 狡猾で知的な手法と言いたくなります。

秘密警察に連行されて炭鉱掘りを強いられる元図書館司書に、地上の明かりから遠ざかっていく中「今は幸せだ」と、以前の哲学的な物言いとは正反対の単純労働を賛美する台詞を言わせる皮肉。。強烈でした。

'69年製作。邦題『つながれたヒバリ』は、原題を日本語訳したもの。
20年に渡って上映禁止だった本作は '89年のビロード革命により漸(ようや)く冬の時代を終え、その翌年に公開。
Wikipediaによると、ヒバリは「春を告げる鳥」と呼ばれているそうです。
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