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細い目のncccoのレビュー・感想・評価

細い目(2004年製作の映画)
4.2
わたしはタレンタイムよりダンゼンこっち派。
純度が高くてキラキラしたものが無造作に詰め込まれたような、狙わずして出来上がってしまったような完成度の高さに眩暈がした。

ジェイソンのゆるゆるとした長回しのダンスシーン。
強い日差し、金城武にウォンカーウァイ。
ふと立ち寄った出店での鮮烈な出会い。
一目見ただけで恋に落ちるふたりのまばゆさ、その素直な歓びに心の奥底をぎゅっとつかみだされるような気持ちになる。

この映画を一言であらわすならブルーグリーン。
オーキッドのやさしさが、ジェイソンのひたむきさが、揺れる気持ちが、鮮やかな色彩の中に包み込まれていく。
どこかエドワードヤン的な、懐かしさ。
人を愛するって、むずかしいけれどシンプルなのだ。
爽やかで愛に満ちた、優しい画面がそう語りかけてくれる。

ふたりの恋を描くのと同時にこれは母の目線、ひいては監督の目線を色濃く感じさせてくれる作品でもある。
あなたが傷んだらわたしも痛む。冒頭のお母さんのパートからもう泣きそうになった。だからこそ、少年が胸を痛める膝枕のシーンでも、ラストシーンでも、「母の目線」で少年を見つめることで、その痛みがぐっさりと刺さるように引き立つのだ。

観終わったあと心に残るのは、衝撃的な結末よりも、二人を包む家族の気持ちのあたたかさ、ふたりが互いを想い合うそのただひたすらにひたむきな感情の粒の、色鮮やかさだった。何時観てもこれを美しいといえる自分でありたいと、切に願うのです。
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