イチロヲ

最後の命令のイチロヲのレビュー・感想・評価

最後の命令(1928年製作の映画)
4.5
ロシア帝国の戦争遂行に尽力している司令官が、ロシアの変革を求めている女性運動家と心を通わせていく。「憂国の情」によって生み出される混沌状態を描いている、サイレント期のヒューマン・ドラマ。

ロシア人監督が手掛けるハリウッド大作の将校役に抜擢された老人が、ロシア帝国の司令官時代を回顧していく物語。政府側と反政府側の抗争劇を、大規模なエキストラ撮影を駆使しながら描写しているため、映像面の訴求力が半端ない。

戦争被害を最小限度に抑えるためには、ロシア皇帝の指示に逆らうことも厭わない。そんな、気骨のある司令官に付き添うことになった革命家のヒロインが、「お互いに立ち位置が異なるけれども、ロシアの将来を憂える気持ちは同じ」ということに勘付いていく。

脱走した奴隷たちが反撃を開始すると、板挟みにされているヒロインがどうしたものかと悩みに悩む。正解が見えない難問に気づく人間と気づかない人間の対比。人間を人間扱いしない、グロテスクの真髄を識ることができる。
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