イチロヲ

スペードの女王のイチロヲのレビュー・感想・評価

スペードの女王(1949年製作の映画)
4.0
悪魔の囁きを聞き入れて、エゴイストとなった下級兵士が、高齢の伯爵夫人が手中にしているカードゲームの勝札を奪い取ろうとする。アレクサンドル・プーシキンの短編を映像化している、サスペンス映画。

カードゲーム(賭博)隆盛時の19世紀ロシア社交界を舞台背景にしているが、イギリス映画のため台詞の言語は英語になっている。また役者陣では、高齢の公爵夫人役を演じる女優(当時80歳)が、存在感満点の芝居を披露してくれる。

書店で偶然目に入った悪魔の書から、窃盗のイメージを感得するという展開が面白い。「主人公のイメージ通りに仕事を進めることができるのか」「伯爵夫人に仕えている侍女(=ヒロイン)に幸せな未来があるのか」という部分にサスペンスが置かれている。

「悪魔に魂を売る」という概念を鮮やかに具現化しており、主人公の顔つきが徐々に変わっていく様が、脳裏に焼き付く。自己を保つことの困難さと、処世術の何たるかを考えさせれる作品。
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