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反撥のtkykのレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
3.7
冒頭の瞳のどアップにギョッとさせられたのに象徴するように本作は顔のショットが非常に印象的だった。キャロルの表情、特に視線は常に不安定で彼女がどんな状態なのか全く掴みどころがなかった。
そしてその不安定さが外部に表出してからは作品のトーンも不安定なものとなっていた。いきなり謎の男に襲われたかと思うと何事も無かったのように振る舞い、壁から無数の手が現れたかと思うとやはり何事も無かったかのように振舞っていた。ショッキングな出来事が起こっているのにも関わらず前後の文脈があまり繋がっていないように感じた。これはやはりキャロルの不安定な精神状態を表しているのかもしれない。
映画にある種の不安定さを感じながらも一貫して描かれているものもあり、それが男性からの視線とそれに対する嫌悪感である。義理の兄に対する嫌悪感が冒頭から示されるがその後もキャロルを口説こうとする男性や大家の男性など、キャロルに視線を注ぐ男性が現れる。そして彼らに対する嫌悪感はキャロルの極端な行動へと繋がっている。この点で非常にフェミニズム的な視点を感じさせた。
様々な視覚的表現が散りばめられており、狂気を映画的に表現している作品だった。
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