ぽん

ノーマ・レイのぽんのレビュー・感想・評価

ノーマ・レイ(1979年製作の映画)
4.0
先日のアカデミー賞授賞式で“アジア人の透明化”が可視化されたとSNSで話題になった。プレゼンターのミシェル・ヨーに失礼な態度をとった(ように見えた)エマ・ストーンとジェニファー・ローレンス。その時、同じ舞台にいて「ちょっとアナタ、それはダメよ」って感じでジャニファーの行動を止めようとした(ように見えた)のがサリー・フィールド。なんてフェアな人なんだとますます好きになり、勝手に応援企画で彼女が主演女優賞を獲った本作を観てみることにしました。

うーん、イイ作品でしたねー。テーマもノリも全然違うけど、イケイケのシングルマザーが義侠心で立ち上がって邁進する感じは「エリン・ブロコビッチ」(2000)に似てるかも。工場で労働組合を作るという地味なハナシだけど、人はどうあるべきかどう生きるべきかを問いかけていて、そういう真面目さがディープな昭和世代の自分にはグッとくる。そして、強大な権力に立ち向かうために弱い個人が連帯するという、そのプロセス自体も案外ドラマチックなんですよね。パッと見は地味だけど。

まぁ、なんと言ってもサリー・フィールドの演技が抜群です。ビッチな面もありながら芯の強さ、聡明さがにじみ出て、とても魅力的な女性を創り上げている。ダイナーでコーヒーを飲んでるとき、かき回したスプーンを口に入れちゃう仕種なんか巧い。店じゃやらんだろ普通w 
他にも素敵なシーンが色々ありましたが、ネタバレになっちゃうので、下に書きます。




****** 印象深かったシーン(ネタバレ)******



組合本部からやってきた活動家のルーベン(ロン・リーブマン)と最後に握手を交わすところ。同志としてお互いに信頼しあい尊敬しあっていて、本音の部分では異性として惹かれてるけど節度を保っているムズキュンな二人がよき。ルーベンの車が走り去った後も、エンドロールの終わりまで立ち尽くすノーマに涙。途中で音楽終わっちゃって無音になるのがまた。


会社が工員たちを分裂させようとして、組合運動は黒人が主導している的な貼り紙を掲示した際、これは逆に妨害工作の証拠になると、ルーベンはノーマに「貼り紙を書き写してこい」と命令する。(ルーベンは外部の人間なので工場に入れない) 監視されてるので「口紅を万引きした時のようだわ」と呟きつつ工場に戻ろうとするノーマ。その時はどうだった?という声を背中で聞きながら「成功したわ!」って右手を振り上げて叫ぶの好き。いいライン。


会社側の妨害で工場から追い出されそうになったノーマが、作業台に飛び乗って「UNION」と書いたボール紙を高々と頭上に掲げると、それを見た工員たちが一人、また一人と機械を止めて連帯の意思表示をする。感動を煽るような音楽はナシ。ガッシャンガッシャン機械音が鳴り響くだけのシーンで、少しずつ音が止んでいってやがて静寂が訪れるけどエモーションは高揚していくという、このシークエンスは白眉ですね。
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