ストレンジラヴ

暗殺の森のストレンジラヴのレビュー・感想・評価

暗殺の森(1970年製作の映画)
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「どんな仕事でもやるが、卑怯者と組むのだけはごめんだ」

午前十時の映画祭13のうち、最も心待ちにしていた作品。そのため、配信には目もくれず事前情報も極力遮断し続けた。
歴史の重みという欧州の最大の特色を躊躇なく醸し出した出来にもう脱帽するしかない。カメラワーク、そして光と陰の出し入れに目をみはっていたら、やっぱりヴィットリオ・ストラーロの撮影だった。光と陰に恐怖を足すのがゴードン・ウィリスならば、不気味さを足すのがストラーロだったりする。
そして終盤の展開の違和感のなさに観終わってからハッとさせられた。序盤のとあるシーンで、どうしても自分の中で辻褄の合わない場面があったのだが、最後の最後で種明かしがあった。幻影と現実の見境がかくも線引きできなくなるとは、いやはや恐れ入った。
西洋の退廃、そしてエロスに時折顔を覗かせる東洋の美、周知のように、後年ベルトルッチ監督はラストエンペラー(1987)で激動の満州を描くわけだが、この時既に東洋への憧れは芽吹いていたようだ。
知識はあるが思想を持てず、故に時流に染まるほかないものの染まりきることも叶わない男。クロスステップのように交錯する中で"愛"を探し求めて彷徨うその背中には"孤独"が常につきまとう。寄る辺なき姿を映し出した映像はどこまでも両性的なのであった。