Reina_FOB

籠の中の乙女のReina_FOBのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.7
圧巻。再生ボタンを押した時から1時間半、意識を吸い込まれた。風景画の様に全てを淡々と写し、見たくない物を遮る様に被写体から視点を逸らす撮影手法。まるで、怖いもの見たさに勝てず、指の間から恐る恐る見る様に。この"籠の中の乙女"を借りるために近辺のレンタルビデオ店を探し回り、アナログ人間ゆえ、"お取り寄せ"までして手に入れた努力は報われた!しかも、最高の形で。一言で言うなら、奇妙な家族の倒置した愛情表現を"バイオレンス・ブラックコメディ"で描いた傑作。考えさせられたのは、親が子どもにつく嘘。大なり小なり親は嘘をつく。「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」とか「寝ないとお化けがくる」などなど…他愛も無いかわいい嘘。そんな嘘でも、子どもは疑うことなど出来ず、小学3年生の時に「え、まだサンタとか信じてんの?www」「いや!いるわけ無いし!知ってるし!」そんな屈辱的なやり取りを強いられるわけですよ。しかし、それを極限まで突き詰めるとこの可笑しな夫婦に行き着くのかもしれない。子どもに対する情報規制は、ゲーム、映画など対するレイティングや有害図書指定など、枚挙にいとまがない。それも全て子どもに悪影響が無い様に考慮してあげている気になっている。果たしてそれは本当に子どものためなのか?"コロンバイン高校銃乱射事件"にしても"Marilyn Manson"を聴くと人を殺したくなるのか?子ども達が得た"情報"が"行動"させたのか?それとも、"行動"が"情報"を求め行動したのか?会ったことも無い、話をしたことも無いロックバンドの方が、実の親や、担任、近所の大人の声よりも心に響いたのは何故だろうか?周りの大人が気づくことが出来なかった責任はないのか?って、かなーり脱線したので戻します。(^^;;
かなり熱く語りましたが…。この夫婦の感情は誰にでもあると言うことを言いたい!支配したい、優位に立ちたい、それを親の愛情に見せかけて強制している、どこか社会の縮図の様なそれを、極端な家族の描写で暴きだした、かなりアナーキーな作品に感じましたね。映画のなかで訓練場に入れられ、番犬やな育て上げられていたドーベルマンの様に厳しく調教されても、情報操作されても、子どもたちの欲望を統制することは出来なかった…。うん、深い!ぐだぐだと駄文を書き連ねましたが…もしこの映画に興味を持たれたのであれば、ぜひ、"ロッキー""フラッシュダンス""JAWS"は観てからだと理解しやすいです。映画好きには常識的な作品だと思うのですが…恥ずかしながら前者2作品は未見でした(ーー;)
なーんか今さら観れないというか…(スター・ウォーズとか、ザ・シネマ!って感じの映画が、食わず嫌いです…名作だし観たら面白いんだろうけど)
それにしても世の中まだまだ良作カルトが生み出されてますね!
こんな風に、たまーに良いカルト映画に会えると嬉しくなります。
ああ、これからも興行的に成功し辛いカルトを生暖かい目で見守ろう!

ストーリー 0.9
美術(メイク・衣装) 0.6
音楽 0.5
演技力・撮影 0.8
全体の雰囲気 0.9

3.7点
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