月うさぎ

アイ,ロボットの月うさぎのレビュー・感想・評価

アイ,ロボット(2004年製作の映画)
3.8
2035年シカゴ
町にはロボットが溢れ、人が嫌がる仕事や雑用を黙々と引き受けている。

殺人課の刑事、スプーナーは、ある事件からのトラウマを抱えており毎晩のように悪夢をみる。
彼の恩人でもあるラニング博士が飛び降り自殺をしたため、警察として調査に赴いたが、そこには「意志を持ったロボット」がいた。
彼の疑いはそのロボットへ向けられる。

スプーナーはロボット嫌い。その上懐古趣味。

起き抜けにステレオのスイッチを入れると、いきなりスティーヴィー・ワンダーの「Superstition(迷信)」が流れる。
シャワーを浴びながら唄に合わせて、「Seven years of bad luck~」

「2004年物のコンバース オールスター」
ビンテージのスニーカーがお気に入り

ガソリンで走るバイクをご愛用
などなど
かなりの「奇行(!)」が目立ちます(笑)


本作はロボット3原則がテーマとなっています。
…とくれば、アイザック・アシモフの「われはロボット」ですね。
タイトルからして「われはロボット」が元ネタのようですが、原作ではなく、映画のストーリーは完全オリジナルです。いわばアシモフのロボットのその未来を描いたと言えるでしょう。

「ロボット工学の三原則」
第一条   ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に 危害を及ぼしてはならない。
第二条   ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条   ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

私がこれを知ったのは手塚治虫の漫画「アトム」によってでした。

小学生の私にも、この原則が「なんか変」なのはわかっていました。

この一見考え抜かれて瑕疵が無いように見えるこの規約の矛盾。正しい決断は理論で導かれるとは限らないという事。

特に「アトム」では、ロボットに心がある設定なのでなおさらです。
本作にも命の選別という重要な問題が提起されています。

伏線は回収され、決して斬新さは無いものの、一定レベルの面白さがある作品。
ストーリーは王道のロボットSFと言えるでしょう。
古臭いのはアシモフ要素だから。しょうがないよね(^。^)
つまり旧型のNS-4型はアシモフの時代のロボット。人間の奴隷として忠誠を尽くす家事手伝いロボットなのだ。新開発されたNS-5型は人間を遥かに凌駕するパワーと能力を備えた現代的ロボット。旧型を一掃し、人間社会の中に…( ̄∀ ̄)


ところで私、ロボットの大群を見た時、アリやハチのような昆虫を連想したのです。
同じ姿、同じ目的と意志、統制と制御、個の否定、硬い体、無表情。
唯一「自殺」したとされる博士の元にいたロボットだけが、サニーという名前を持ち、博士を「愛し」、夢を見、自由意思を持てるように作られていた。

博士は何を伝えたかったのでしょうか?

もうちょっと博士に語ってほしかったなーと。
月うさぎ

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