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群衆のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

群衆(1928年製作の映画)
4.0
同じタイトルで、キング・ヴィダー監督による1928年の方の「群衆」。サイレントであることを忘れるほど細やかな演技と演出で、群衆の中の一人の「ふつうの人」の人生を丁寧に描いている良作。ひとつひとつのエピソードが胸を打ちます。

「ふつうの人生」ってなんだろう。親は生まれてきた子供に何を期待するのか。「ひとかどの人」になれ、と期待されたが、平凡に育ち、理想と現実のギャップの間で、いつかは…と夢だけ抱えたまま凡庸な大人になった男がつかむ「ふつうの人生」。山も谷も人生。善き映画でした。

いつか立派になるんだと、理想を抱えているが、凡庸な男には仕事も人並み。家庭では子供のまま大人になってしまった。アメリカにも糟糠の妻、内助の功があり、のんきで我が儘な夫は三人目の子供みたい、妻はまるで男のママでした。子供みたいな男でも、家族を愛することだけは、人一倍できました。出来た妻がいるからですが。

「八月の鯨」で「人生の半分はトラブル、残りの半分はそれを乗り越えるためにある」と姉役の79歳のベティ・デイビスが語るセリフが沁みます。

その長い人生の間に、時々きらめくときがある。「ふつうの人生」を彩るライフイベント。そして苦しみと悲しみ。

生命保険や住宅の長いCMを観ている錯覚にもなりました。
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