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ジュリー&ジュリアのtakのレビュー・感想・評価

ジュリー&ジュリア(2009年製作の映画)
3.7
ノーラ・エフロンが関わった映画にハズレは少ない(個人の感想です)。「ジュリー&ジュリア」を観る気になったのもその信頼があったからだ。これまでの映画でも見られた、2つの舞台の同時進行(「めぐり逢えたら」)、インターネットを介した物語(「ユー・ガット・メール」)という要素がここでも取り入れられている。しかし「ジュリー&ジュリア」は実話であること、そして異なる時代の二人の女性を並行して描くというこれまでにない野心作。

50年前にフランス料理の本を出して人気者になり、アメリカの家庭料理に大きな影響を与えたジュリア・チャイルド。演ずるのはメリル・ストリープ。一方は現在。その本のレシピを全て作ってブログに載せることに挑戦するジュリー・パウエル。演ずるのはエイミー・アダムス。ジュリアはいろんな紆余曲折を経て料理本を出版し、お茶の間でも人気者になる。ジュリーは500を越えるレシピを1年間で作ることに挑戦して、ブログ読者の支持を得て、やがてマスコミからも注目される存在になっていく。時を隔てた二人が直接触れあうこともないのだが、食を楽しむ、食を通じて人を喜ばせることを貫いていく様子がとても素敵だ。

好きなことを貫いて、多くの人に受け入れられる。素晴らしいことだ。また続けていくことの難しさも描かれている。ジュリアもジュリーも挫折しそうになったりもしたし、理解されない苦しさも味わっている。出版社に自分の考え方が受け入れられなかったり、料理に夢中になる自分に夫がイラついたり。そうしたことを乗り越えて彼女たちは成功することになる。一事を貫くことの素晴らしさ。

でも僕がこの映画を観ていちばん心に残ったのは夫婦のあり方だ。料理の腕で成功する女性が主人公だが、彼女たちの成功は夫の理解と助言、協力があってこそだ。単に好きにやらせていたという放任と違う。一緒に料理を楽しんでいるし、夫が喜ぶ姿が彼女たちの原動力にもなっている。夫婦として一緒に物事を楽しむこと。感動を共有すること。お互いの好きなことを許容して認めること。これらがジュリアにもジュリーにもあったことが幸せなことだ。ジュリアの夫役スタンリー・トゥッチの優しい視線。政治に翻弄される外交官である自分にクサったりもするけれど、妻の笑顔を絶やさないように見守る姿。夫婦喧嘩してジュリーの夫が出て行ったエピソード。妻が落ち込んでいるブログ記事を読んで、夫が自宅に戻る場面。ジュリーにかける一言もじーんときますね。映画館を出た後で、自分は、うちの夫婦はどうだろう・・・と我が身を振り返ってみる。

ただ、見方によっては二人の考えにギャップを感じることもあるだろう。食べることが大好きだから料理が好きになるジュリアと、その料理を作ることを目的にしてしまったジュリー。同じ料理が好きなことにも隔たりがあるようにも見える。発信を続けるネタのために行動したりすることもあるし。しかし、二人とも料理を通じて人を喜ばせたい、幸せにしたいと思っていることは変わらないとも思うのだ。奥様の料理に「おいしいよ」って言ってあげてるだろうか?ご主人に出す料理を義務感に感じていないだろうか?この映画を観て、ちょっとそんなことを考えてみるのもいいかもね。
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