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十戒の教授のレビュー・感想・評価

十戒(1956年製作の映画)
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歴史の基本的なことを意外にちゃんと知らない部分もあって、とりあえず映画から始めてみる。
ということで旧約聖書「出エジプト記」の話。

見どころはとにかく豊富。
とにかく大スケール、大スペクタクル。デジタル化された映像の美しさによって、とにかく華美で優雅な映像のオンパレード。
本作のようなクラシック超大作は、人海戦術の迫力が物凄い。
フィルム撮影による陰影と、カラーフィルムに焼き付けて印象付けられる衣装の煌びやかさ、人馬の迫力、セットの巨大さ、ダイナミックな撮影や編集と、ギラギラした編集、そしてモーゼを演じるチャールトン・ヘストンやラメセス王子を演じるユル・ブリンナーなど、端役と含む「(ほぼ)裸の」男たちの筋力のダイナミズムまで、映画的アクションを感じるショットの力が印象的。

作劇の部分としても、旧約聖書のダイジェスト的なシンプルな流れもありつつ、特にネフェルタリ(アン・バクスター)やべシア(ニナ・フォック)のような敵側の女性たちを魅了し、エジプト王であるセティ1世(セドリック・ハードウィック)も今際の際には「愛している」と言って絶命するというエピソードなどヘブライ人(あるいはユダヤ人)たちのモーゼへの仮託の想いの強さが感じられる。
一方で暴君としてのラメセス王子の「父親に愛されなかった無念」などの哀感も説明的でなく深みがある。

終盤の名シーン紅海が割れるシーンの後、先行きへの不安と自由を得た歓喜から堕落し、異教を信仰し、堕落する民衆に対して、より支配的に信仰を刻みつけるための「十戒」の持つ排他性、宗教と倫理の結びつきにグロテスクさも、作中のメッセージの意図を超えて、切実に迫ってくる。

3時間20分の長尺の中に、舞台劇っぽい演技的な古めかしさは感じるけれど、興味深く面白い作品だった。
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