鎌谷ミキ

HANA-BIの鎌谷ミキのレビュー・感想・評価

HANA-BI(1997年製作の映画)
4.3
【キタノ美学がこの一本に】

[あらすじ]
凶悪犯の自宅を張り込み中の刑事・西佳敬(ビートたけし)は、親友で同僚の堀部(大杉漣)に張り込みを代わってもらい、不治の病で入院中の妻・美幸(岸本加世子)を見舞いに向かう。 しかしその間に堀部は犯人に撃たれ、命は取り留めたものの下半身不随となる。

[レビュー]
キタノ作品『首』よりこちらの方が昔に観ていますが、当時高校生の私には全く刺さらず(場面場面はちょっと覚えてた)
ちょこちょこ叔父のDVDコレクションから観ていこうかなと。『その男、凶暴につき』らがなかったので、人間ドラマということでこちら。

・「馬鹿野郎」「この野郎」の多用で生まれるテンポ感
やっぱりキタノ作品には欠かせない言い回しのような気がします。「〜してんだ馬鹿野郎」絞めの言葉でもしっくりくるし「この野郎〜」という出だしは毎回新鮮。なんせ普段聞かない…

・あっさりと人が死ぬ
『首』パンフでも触れられていたけれど、戦争の映像を見て「あっさりしている」と思ったそうなので、キタノ映画はさくっと死を描写している感じ。

・時折訪れる緊張の中の緩和
『首』でもその手腕を発揮されてましたが、流石本作のようなテイストにちょっとした笑いは忘れない。花火の下りはわかってても、クスり。

・主人公西は無駄にしゃべらない
序盤、あれれ?ほとんど口を開かないぞ!?となってたんですが、後半になると少しだけ饒舌になります。オン・オフかなと感じました。静かに佇むビートたけし、画になります。

・独特な絵画は北野監督作
めっちゃ独特な絵画出てくるなと思ってED確認したら、やっぱり監督の描いた物でした。顔が植物になっているこれらの絵はインパクト大。

・多くを語らないからこそ、久石譲さんの音楽が染みる
他のキャラクター(寺島進さんもこの頃には常連かな)は結構喋るけれど、西も美幸さんも静かに佇んでいたり。そこで登場するのが、久石さんのBGM。主人公の感情を表しているような、ドラマティックなものが多く、耳に残りました。男は音で語る。

これだけの特徴が出てきての、キタノブルーですよ。ここまで個性の強い作家さんはなかなかいない。終わり方が悲しすぎるけれど、私は『Dolls』の方が覚えているので、想像の範囲内でした。あれしかなかったんだなぁ…辛い。

これは、ある夫婦を描いた刺激的な作品。多くを語らずとも"その先"を分かち合える。
得意のバイオレンス描写もいい塩梅。やっぱり割り箸はグロいから、マイナス多いんだけど💦
鎌谷ミキ

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