『マルホランド・ドライブ』
原題Mulholland Drive.
製作年2001年。上映時間146分。

デビッド・リンチ監督が、TVシリーズ用にあたためてきた企画やったが、米国のTV局に却下されたのち、仏国のプロデューサーに見いだされ、映画化された米国産異色作。

ある真夜中、マルホランド・ドライブで車の衝突事故が発生。
ただ独り助かった黒髪の女は、ハリウッドの街までなんとか辿り着き、留守宅へ忍び込む。
すると、そこは有名女優ルースの家だった。
そして、直後にやってきたルースの姪ベティに見つかってしまう。
ベティは、とっさにリタと名乗ったこの女を叔母の友人と思い込むが、すぐに見知らぬ他人であることを知った。何も思い出せないと打ち明けるリタ。手掛かりは大金と謎の青い鍵が入った彼女のバッグ。
ベティは同情と好奇心から、リタの記憶を取り戻す手助けを買って出るのだが。。。

暗闇の中に、やがてうっすらと白い光を放ちながら、『マルホランド・ドライブ』 と書かれた道標が浮かびあがる(これが本作のタイトル・クレジット)。
そこは丘の上へと続く長い坂道。
一台の真っ黒なリムジンが、車体をあやしげにくねらせながら、坂道を上ってくる。
後部座席に乗っているのは、物憂げな表情をした一人の美女。。。
この何とも云えんエロティックなオープニング・シークエンスは、劇中で二回繰り返される。
つまり、本作は二回のタイトル・クレジットを擁する映画やし、それこそが一見難解な見方をもつ本作品の暗喩となっているんかな。
ここに描かれとるのは、デヴィッド・リンチならではの悪夢的かつ悲劇的な女の物語です。
本作品は、先にも書いた様に、もともとABCでのテレビ放映用に製作されたけど、内容に難色を示した局の上層部によって、一時はお蔵入りを余儀なくされてた。
その後、フランスの配給会社カナル・プラスの資金援助を得て、当初のシナリオを大幅に改稿。
劇場用作品として完成され、カンヌ映画祭などで絶賛された｡
人の人生も映画の未来もチョッと方向変えるだけで大きく変わる。
お話は、女優を夢見てハリウッドへやって来たベティ｡
長期旅行中の叔母の家を借り受け、新たな生活を始めようとしていた彼女を待っていたのは、リタと名乗る見知らぬ女。
リタは自動車事故のせいで記憶を喪失 し、不安に駆られながら、この家に逃げ込んできた。
ベティはリタに同情し、叔母の留守中、彼女を同 居人として住まわせることにする。
そして、失われた 記憶を取り戻すため、行動を開始する。
自分の夢に向かって邁進するベティと、不運なアクシデントに翻弄されるリタ。
観てる側は､善良で好感の持てるこの二人の美女に感情移入しながら、物語を追っていく｡
合間には、ハリウッドの若手有望株でありな がらなぜかむどい目にばかり遭わされる映画監督のアダムに、
彼に不思議な指示を与えるカウボーイ、
その裏で暗躍するハリウッドの大物たち、
ダイナーで恐ろし 夢を告白するドジな殺し屋とか、
いくつかのエピソードが雑多にちりばめられてました。
それぞれのキャラは、重なり合いそうで重なり合わず、緩やかな関連性を示しながら、不可思議な物語のコマとなって動く。
やがて、ベティとリタの将来に明るい光が見えはじめた矢先、映画は謎めいたブルーボックスの出現とともに、急速な展開を見せる。
いままで今作品の軸となっとった物語は、数ある断片の一部にバラされ、すべてのエピソード、人物、ディテールが実は一つの悲劇的真実を示していたことが明らかになる。
リンチ自身が、本作品をビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』 (ある殺人事件をきっか けに、往年のハリウッド女優の妄執を描いたフィルムノワールの傑作。) へのオマージュと語っていることからもわかるように、ここで描かれとんのは、ハリ ウッドちゅう夢の世界に裏切られた女が妄想狂的につくりあげたもうつの夢の世界である夢と憧れに生きる女が悲劇的な運命に敗北していくちゅうモチーフがあるんやと思うし、それは、大ヒットしたテレビシリーズの『ツイン・ピークス』で無惨に殺られちまう女子高生ローラ・バー デーや、本作の次に製作された『インランド・エンパイア』の主人公ニッキー・ グレイスなど他のリンチ作品の登場人物にも当てはまるんかなぁと。
ラスト、まばゆいライトを浴びながら微笑む女の顔にオーバーラップするのは、『マルホランド･ドライブ』を上り切った先に待っている(はずの)夢の風景にほかならないんかな。

意識の奥の劇場で響きわたる歌声に、涙を流す女の 悲しみは、混乱とあ然のうちに映画を観終えた観客に も、深い余韻を残すことだろう。

独特ー！！！

ディビットリンチ監督
マルホランドドライブ

鑑賞しました。

これは面白いですね。
町山さんの解説聞いてもっと好きになった。

でも解説抜きでも充分推理できるし、
推理するのが楽しい。
ディビットリンチは本当シュールレアリズムの人ですね。
表現方法や着眼点が面白い。

そしてナオミワッツ迫真の演技！


早いですが、以下ネタバレになりますのでお気をつけください。





いや、夢かーい！！
と、夢オチ系には過剰反応しがちなんですが、今回は夢の作り方が巧妙で驚いた。

そして夢の方を先に作って、後で回収してる感じがまた面白い笑

ドキドキハラハラするけど、ちゃんとアートだし、そしてエロちっく。

現実の彼女に起こってたことが、こういう夢になるってのはものすごく現実的だなと思いました。脳って面白い。
夢って、怖かったり幸せだったり色々しますよね。

私の夢の話をすると、
夢の中でよく追い詰められたり殺されそうになった瞬間に、
“はい、カットー！
テイク2行きまーす！”
と私が叫ぶとその緊迫した瞬間に混乱が起きて、どうにか逃げられるってオチが多かったな。
夢の中で対応策覚えてる自分面白い笑

シレンシオ

　アメリカ・ロサンゼルス、まるで『ロスト・ハイウェイ』のような真夜中の道を、黒いリムジンはうねうねと蛇行しながら進む。標識には「マルホランドドライブ」とある。後部座席に座った女は一仕事終えたような気怠さを見せるが、助手席に座った男は突然「降りろ」と言いながら女性に銃を突きつける。若者の競うドラッグ・レースの狂騒、真夜中の田舎道に無防備になったドライバーがブレーキをかけずに飛び出すと、鉛のようなリムジンのボディに制御不能になったキャデラックが突っ込む。女は車からよろめきながら出ると、坂下に拡がる住宅街のネオンに目をやる。おぼつかない足取りはユーカリの樹を掻き分けながら、徐々に住宅街の方へ南下して行く。朦朧とする意識の中、女は住宅街の死角になりそうな生垣の下に横たわる。翌朝、車のエンジンの音で目を覚ました女は、トランクケース片手に家主の女性が出かけて行くのを確認し、女の部屋で眠りこける。一方その頃、女優になるためにカナダからハリウッドへやって来たベティ・エルムス（ナオミ・ワッツ）は、叔母のルースの部屋で新たな生活を始めようとしていた。管理人のミセス・ルノワ（アン・ミラー）に挨拶をし、叔母の部屋を間借りした彼女の元に、人の気配がする。シャワー・ルームを覗くと、すりガラス越しに女の影が見える。叔母の友人が泊まっていると認識した彼女は名前を聞くが、彼女は往年の名女優の名を拝借し、リタ・ヘイワース（ローラ・ハリング）と答える。

　女優になるというシンデレラ・ストーリーを夢見るベティと、突然記憶喪失となる不幸なリタとの道行きは、彼女の欠落した記憶を辿る旅となる。映画は2人の女性の危なっかしい道行きを本線にしながら、ハリウッドきっての若手有望監督で黒いサングラスがトレード・マークのアダム・ケシャー（ジャスティン・セロー）や、特定の女優のゴリ押ししようとする裏の顔役ヴィンチェンゾ・カスティリアーニ（ダン・ヘダヤ）、ダイナーで恐ろしい夢を告白する男らの挿話を随所に織り交ぜ、クライマックスへと進む。中盤までの展開は、これまでのリンチ作品の中でも『ストレイト・ストーリー』と並ぶ明瞭さが際立つが、リタが青い箱に鍵を差し込んだところから一気に雲行きが怪しくなる。ベティとリタの淡い恋はダイアン・セルウィンとカミーラ・ローズには通用せず、親しかったはずのミセス・ルノワもアダムの母に立場を変える。『ロスト・ハイウェイ』のレネエ・マディソンとアリス・ウェイクフィールド、『ツイン・ピークス/THE RETURN』のダイアン（ローラ・ダーン）やナイド（裕木奈江）のように、ブルネットからブロンドへと変身を遂げる退廃的な女の美しさに観客は惑いながら、しばし甘い旅に出る。ビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』にオマージュを捧げた物語は、ハリウッドの光と影を巧みに映し出す。