イチロヲ

ノスフェラトゥのイチロヲのレビュー・感想・評価

ノスフェラトゥ(1978年製作の映画)
4.0
雇い主の申し入れによりトランシルヴァニアまでやって来た不動産業者の青年が、いわくつきのドラキュラ伯爵を町へと解き放ってしまう。1922年度のF・W・ムルナウ版をリメイクしている、サスペンス・ホラー。

本作でドラキュラ役を演じるのは、奇人変人としても有名なクラウス・キンスキー。個人的には、ムルナウ版ドラキュラの無機質な立ち居振る舞いのほうが好きなのだが、本作のドラキュラの異物感も負けてはいない。

オリジナルをベースにしているため、シナリオ面に大きな発見はないが、19世紀のドイツを再現している、美しい映像世界が白眉となっている。荘厳な音楽による相乗効果も素晴らしく、時には牧歌的に、また時には呪術的に、あらゆる刺激を提供してくる。

また、若かりし頃のイザベル・アジャーニが羞花閉月の美しさを誇っており、文芸映画の格式を引き上げてくれる。首筋を噛むという行為の官能性も、ブラッシュアップされているように感じられる。
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