革芸之介

ふたりのベロニカの革芸之介のレビュー・感想・評価

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)
4.3
キェシロフスキ監督独特の色彩感覚が冴えわたる幻想的な画面空間。

結局、映画って「照明」なんだなぁ。光を駆使して画を造形する。本作は「黄緑」っぽい照明が特徴的。屋内のシーンで窓の外が黄緑になってたり、ちょっとこの色使いはソクーロフの映画っぽいかなぁとも感じた。

ポーランドのベロニカのエピソードの時に出てくるおばちゃんの顔に当たる照明の気持ち悪さはデヴィッド・リンチっぽい。

まぁとにかく、本作最大の見所はイレーヌ・ジャコブですよね。最高の照明を最高の女優に当てたら、そりゃあ素晴らしい作品ができますよ。イレーヌ・ジャコブって映画の出演本数そんなに多くはないと思うけど、「トリコロール/赤の愛」とかアンゲロプロスの「エレニの帰郷」も傑作だったよなぁ。

もう序盤のベッドシーンでイレーヌ・ジャコブの乳房が映されるが、まぁ綺麗な胸ですよ。後半のフランスのベロニカのエピソードの最初にもセックスシーンが出てくるが、ここも画面が少し歪んだりして、独特のラブシーンとして演出されていて、イレーヌ・ジャコブもこんなに綺麗に撮ってもらえて光栄だっただろう。

イレーヌ・ジャコブ演じる、ふたりのベロニカが遭遇するシーンの映画的な興奮。地面に散らばってしまう楽譜、大広場、群衆、デモ隊、ベロニカとバスの距離感、このシーンの人々の配置のされ方と動き方はアンゲロプロスを想起させる。
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