見てるときより、見終わった後にじわじわっとくる作品。
見てから数時間経った今、どんどん心の中で大きく、深まっていく感じがとても心地良い。
沖田監督作品特有の穏やかな時間の中で、どこにでもいるような大学生の一年間が展開する。
この映画、驚くほど静か。
劇伴も最小限だし、セリフも効果音もなく「しん」とするシーンが随所にある。
その「しん」とする場面を逃げずにとらえ続けている。それがめちゃくちゃ効果的。そして静かだからこそ、映画館で見るべき作品だと思う。
キャストも皆自然に存在していて素晴らしい。
高良健吾以外の世之介は有り得ない。
吉高由里子は、彼女史上もっとも彼女らしい役を得たと思う。
会話のやりとりも絶妙。セリフかアドリブか分からないシーンがたくさんあった。(実際、アドリブがたくさん採用されているそう。)
セリフの生っぽさが、そのまま映画のリアリティに繋がって、観客は間違いなく親近感を感じるようになる。
そして沖田作品は、作品を邪魔せず、スベらずにクスっと笑える小ネタが随所にあって上手い。
原作は未読だけど、この構成を選んだ脚色は見事。
「あいつのこと知ってるってだけで、なんか得してる気がする」
「あいつに会えたことが、一番の宝物」
人生のなかで1人でも良いから、誰かにそう言ってもらえる人になりたい。