イチロヲ

小さな巨人のイチロヲのレビュー・感想・評価

小さな巨人(1970年製作の映画)
4.5
原住民族の集落で育てられた孤児の少年が、猥雑な白人社会にて厭世精神の昂ぶりを実感していく。西部開拓時代を舞台にして、白人とインディアンの価値観の相違を描いている、アメリカン・ニューシネマ。

アイデンティティの確立を模索する主人公が、「土着主義のインディアン、禁欲主義のクリスチャン、銃愛好家のアウトロー」という立場を転々としていく。そして、各分野の奇異な部分を、引いた目線からギャグ調に表現している。

後半部に入ると、完全な白人にも完全なインディアンにもなれない主人公が、独自の観察眼を利用しながら、一般庶民の人生模様を再確認。人間が頭の中で拵えてしまう「悪魔」の概念について、真摯に向き合っていく。

「生き方を模索している人間は、誰しもがアウトサイダーなのだ」(by コリン・ウィルソン)を地で行く作品。本作の内容を洛中洛外図のような視点で捉えると、「アウトサイダー同士の相克」が真理であることに気づかされる。
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