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白蛇伝のncccoのレビュー・感想・評価

白蛇伝(1958年製作の映画)
4.4
いやー凄かった。今まで観たアニメーションの中で一番好きかもしれない。とろけるような美しい色彩美に吸い込まれていくように、この世界観にのめり込んだ。

滑るような指先の動き、首のかしげに瞳のまたたき。
登場シーンからそこだけが別世界のように、匂いたつような色気を漂わせる許仙にもう完全にノックアウト。

竜宮城のような白娘のお屋敷の描写、ぬめるような蛇や龍のなめらかな動き。可愛い動物たちが紡ぎだすコミカルな描写とミュージカルシークエンスのタイミングの良さ。すべてのピースが完全にはまって、ひたすらに美しい。

人外に男が魅入られるという展開は古来からあるストーリーなれど、パイニャンは男を魅入ろうとしてるんじゃなく、許仙を心の底から愛しているのだ。和尚との闘いのシーンで見せるパイニャンの張り詰めたような怒りの表情が美しさを通り越してもはや神々しい。愛するって、何にも代えがたい強さなのだ。
許仙を想ってパイニャンの想いは宇宙の果ての龍王のもとまで飛んでいく。そのあと魚の精の少青は海を潜ってナマズの王様を引っ張り出す。天地の神が降臨するラストシーンの展開のダイナミックさ、濃密さは白眉。
そして、ハッピーエンドのはずなのに涙涙のキャラクターたちの寂し気な表情に余韻がじんわり残るエンディング。

到底子供向けとは思えない完成度の高さと制作陣の思い入れの強さを感じられる素晴らしい作品。
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