"どうして帰って来たんだ…グロリア…"
マルクはドサ周りのシャンソン歌手、今日も老人ホームの慰問ライブを終え、次のライブ会場である南仏に向けて車を走らせる…
霧が立ち込める山中で道に迷ってしまい、困った事に車が故障…仕方なくペンションに投宿する事となったマルク…
"俺たちはアーティスト…家族だ…"
そう言う宿の主人バルテルは、マルクに何かと世話を焼く…だが、散歩に出ようとするマルクにバルテルは警告する…"決して村には近づくな…あいつらは普通じゃない…"
"ベルギーの闇三部作"コンプリート…
新作"依存魔"公開に合わせて、旧作2本を連続上映という太っ腹な企画のおかげで三部作全てを劇場鑑賞できました…ありがとうございますシネマート新宿様…流石です。
第一章である本作が描く愛の姿は"執着"といったところでしょうか?
"悪魔のいけにえ"的狂気のパラノイア・ワールドが広がり、豚のけたたましい雄叫びと共に、噛み合わない会話、謎のゾンビ・ダンスが不協和音を奏でる…三部作の中ではダントツの居心地の悪さを観客に与える不気味さであります。
視覚的なグロさはさほどありませんが、画面に映る世界を直視するにはかなりの勇気がいるかもしれません。
本作で"グロリア"となるのは、第二章でケチな結婚詐欺師ミシェルを演じたローラン・リュカ。
今作ではトンデモない試練を受けるハメになってしまう売れない歌手マルクですが、何故か老人ホームの婆ちゃんやら職員にモテまくり…ただ、マルクは迷惑顔で素っ気ない…何でこのシーンが入るのか理解に苦しむところだったのですが、冒頭の化粧シーンからどうも違和感を感じていたのです。
そう…マルクは実は同性愛者ではないかと思うんです…しかもそれをマルク本人は気付いていないと…
バルテルや村人からの狂信的な執着の果てに、マルクが辿り着いたのが、同性愛者である自分を自覚する事と考えると、ラストのマルクが"グロリア"として呟く台詞に本作の奥深さを感じます…しかもそんな自分に耐えられない雄叫びで終わるという…
監督のデビュー作ということもあって、やや粗さが見える部分もあり、私的には第二章"地獄愛"が一番完成度が高いのではないかと…三部作の中では"地獄愛"が一番好きかな?