継

ヘヴンの継のレビュー・感想・評価

ヘヴン(2002年製作の映画)
3.5
イタリア, トリノ。
英語教師のフィリッパ(ブランシェット)は, 夫や生徒達をオーバードーズ(過剰摂取)の果てに死なせた麻薬ディーラーの元締めに復讐を試みるが, あやまって罪の無い人々を殺害してしまう。
やがて逮捕され, 尋問で初めてその事実を知らされたフィリッパはショックのあまり気を失う。
尋問の通訳を務める憲兵フィリッポは介抱にあたるが, 彼女に言いようのない運命的な出逢いを感じた彼は, 立場の垣根を超えて恋に落ちてしまう。。



『デカローグ』『トリコロール三部作』等で知られるポーランドの監督キェシロフスキと脚本家クシシュトフ・ピエシェビッチは,
ダンテの『神曲』をモチーフにした「天国・地獄・煉獄」をテーマとする三部作の製作に取り掛かっていましたが, '96年のキェシロフスキの急死により計画は頓挫してしまいました。
本作は, 唯一脚本が完成していたその「天国」篇。
ドイツ人監督トム・ティクヴァにより映画化されたものです。
(『地獄』篇は, '05年にダニス・タノヴィッチにより『美しき運命の傷痕(原題は地獄の意)』として映画化されてます。)

序盤は相当に綱渡りな, これがサスペンスなら破綻をきたしているとも取られかねない筋立てから始まる, 二人の逃避行。
(ちょっと大丈夫かな?)と不安になるも束の間, 一見シンプルな物語は空撮による幻想的な俯瞰映像とアルヴォ・ペルトによる音楽の力も手伝い, なおかつ, 似た名で, 揃って剃髪をして一つにならんとする主演二人の演技によってある種の崇高な空気感を湛えた奥深さを獲得していきます。

和洋の違いはあれど, 似たシチュエーションの逃避行劇『近松物語』のレビューを書いて本作を思い出し, 今回再見を試みたんですが,
元々『神曲』についてはマノエル・ド・オリヴィエラ監督の同名作品を観て手も足も出ず😹,『セブン』のブラッド・ピットばりに “Fuxxin’ Dante !” とレビューも書けずじまいに終わった経緯があってww.
本作の天国…, ヘヴン…, その深淵…, ん〜自分はまだまだ折り合いがつけられないなぁというのが正直なところでした。

タイトルバックで映す碁盤状に整備されたトリノの街並みの俯瞰映像や, ワインの名産地・モンテプルチャーノの長閑な風景、煉瓦造りのゴシック様式が壮観なカリニャーノ宮殿とか, それこそワインでも嗜(たしな)みながら味わえるように…いつかはなりたいものです🍷。
継