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現金に手を出すなの教授のレビュー・感想・評価

現金に手を出すな(1954年製作の映画)
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1954年のフランス映画。
主演はジャン・ギャバンで、どことなくモッサリとした男臭い映画を想像していたので意外だった。

むしろフレンチ・ノワールと称されるギャング映画の古典と言いつつも、現代でも繰り返し描かれている「男性的」な暴力性の持つ「女々しさ」が強調されていて面白かった。

金塊を巡るギャングの攻防、といえど物語のスケールはとてもミニマム。登場人物も少ない。
クールで有能な主人公のマックス(ジャン・ギャバン)は「反社」の世界にくたびれ果て、寄る年波も感じて隠遁したいと考えている。
一方で相棒のリトン(ルネ・ダリー)はその「老い」を受け入れ難さを感じている。
華々しい物語ではなく、作品自体には物悲しさや、寂寥感が漂う。

有能でありながら友情に溺れ、その中でしか生きていけないマックスの心境を捉えた脚本が素晴らしい。
足を引っ張るリトンとのやりとりは、スコセッシであったり北野武であったりと、後年の映画作家への影響は強く感じられる。

枯れ切った老年の寂しさや、犯罪行為に明け暮れた人生の虚しさは、作劇の中心で容赦なく描きつつ、一方でホモソーシャル的にも映る「友情」には微笑ましさすらある振れ幅の演出で可愛げもしっかり映し出されていて、驚きの多い作品。
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