似太郎

江戸川乱歩の 陰獣の似太郎のレビュー・感想・評価

江戸川乱歩の 陰獣(1977年製作の映画)
3.8
🥊俳優というよりも歌手、或いは『あしたのジョー』の声優としての方が印象的なあおい輝彦主演で送る大正時代を舞台にしたサイコ・サスペンス映画。

やくざ映画の巨匠、加藤泰が江戸川乱歩の原作をそこそこ忠実に映画化している。70年代松竹によるオールスターキャストの大作。ヒロインの香川美子さんがとても綺麗に撮られている。

サディズム、脅迫行動、ストーキングなど人間のダークサイドに焦点を当てながらジメッ、ヌルッとした邦画特有の描写で綴られていく。公開当時宣伝した割には大して評判を呼ばなかった映画で興行的に見事にズッコケた。😔

個人的には加藤作品常連の桜町弘子が脇役で出てるのとガロ系漫画家の林静一氏の挿画が美しかった点のみ評価できる。(林静一が加藤泰を全面的にリスペクトしているのは有名な話で、晩年の『炎の如く』にも画面中にイラストが登場する)

結果的に乱歩のシュルレアリスム表現が加藤泰の演出にそぐわかった点が惜しまれる。これならまだ鶴屋南北原作の『怪談・お岩の亡霊』の方が加藤監督らしい【情念と怨嗟】が漲っていて良かったと思う。企画倒れに終わった凡作。😔
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