似太郎

機動警察パトレイバー2 the Movieの似太郎のレビュー・感想・評価

3.8
【戦争は終わっていない】

押井守の作家性云々はさておき、本作のストーリーの【着想】の秘訣はフィリップ・K・ディックみたいなレトリック満載のSF小説(『高い城の男』など)にあると思う。

作画が高密度でメカニカル。これならまだ大友克洋の『AKIRA』の方が人間味があったのに対し、ひたすら冷徹でアンニュイな視点が押井節と言える。作り手の誇大妄想的な雰囲気が強めの作品。

後半辺りから押井守らしいニヒルでペダンチックな作風が、単なるサバゲー(ロボットアニメにありがち)のような感じになるのが少し惜しいのだが、如何にも90年代のアニメアニメ!した作風にちょっと抵抗感を覚える作品である。個人的には…。

あと、中盤で登場人物がグダグダと語る政治討論会(?)はどう考えても不要。映画的強度を阻害しているように思う。

岡本喜八の『日本のいちばん長い日』を意識しるのか一本間違えるとネトウヨすれすれの内容になってしまう危険性も孕んでいる。設定に現実味があまり無いので、所詮脳内世界でしょ?みたいなバーチャル・リアリティっぽさが全編に滲み出ている。

別に傑作という程ではないが、観念的な軍事系ミリタリー・アニメとしては及第点かと思う。平成初頭らしい無愛想でゲチョゲチョした絵が印象的。本作の作画を担当した沖浦啓之のリアルなタッチが特徴ありすぎて何だか笑える。😅
似太郎

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