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地獄門のkojikojiのレビュー・感想・評価

地獄門(1953年製作の映画)
3.9
ネタバレ含んでいると思います。注意⚠️して下さい。





🌖 🌗 🌘 🌑 🌒 🌓

「殺せ!」と懇願する盛遠に対し
「詮無いことだ。」
と妻の袈裟を殺された渡は盛遠に言う。
「お前の首を刎ねても、袈裟は戻りはせん。生き返ってはこない。
 お前は首を刎ねられればそれで済むかも知れん。しかし、後に残った私はどうするのだ。私はどうすればいいのだ。」と渡は言うのだ。
 
なるほどと思った。そんな自分にちょっと驚き、何故かこのシーンが心に残った。

『平家物語』や『源平盛衰記』などで語り継がれた、袈裟と盛遠の物語。
菊池寛の戯曲『袈裟の良人』が原作。

#1335
1953年 大映映画
監督・脚本は衣笠貞之助  
出演者
盛遠:長谷川一夫
袈裟:京マチ子
袈裟の夫、渡:山形勲
音楽は芥川也寸志


 平治の乱で上皇の御妹・上西門院の身替りとなった袈裟を盛遠は助けるが、その美しさに心を奪われてしまう。要するに「懸想」をしてしまう。
 今で言えば完全ストーカーで、しかもかなりタチが悪い。袈裟を悩ませるだけなのがこの男にはわからない。
 昔はこんな男、結構いたんじゃないだろうか。
 論功行賞に際し、清盛から「望み通りの賞を与える」と言われるや、即座に袈裟を乞う。しかし彼女はすでに御所の侍、渡辺渡の妻だった。
 しかしあくまで彼女を忘れられない煩悩に苦しむ盛遠は、加茂の競べ馬で渡に勝利、祝宴の席で場所柄もわきまえず渡に真剣勝負を挑むのだった。

 1953年作品の時代劇。この時期、黒澤監督以外でこんな映画を撮れる監督がいたのかと驚いた。ストーリーも面白いが、カットがすごく斬新で美しい。
 デジタル修正をしているにしてもすごく綺麗な画面だ。最初の方はこの美しさにあっけに取られたほど。総天然色の映画は総天然を通り越して美しすぎる。
とりわけ京マチコの衣装は美しく素晴らしい。

 綺麗なイメージしかない長谷川一夫が荒っぽい坂東武者を演じて、ある意味新鮮だった。この盛遠の恋は全く一方的で酷すぎるストーカー。したがって感情移入はできない。
 見染められた袈裟がいい迷惑なのだ。
 よく長谷川一夫が引き受けだものと思うぐらい酷い役だ。監督との関係性がそうさせたのだろう。
 日本映画、まだまだいい作品がある。

2023.08.04視聴368
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