Kuuta

ロンゲスト・ヤードのKuutaのレビュー・感想・評価

ロンゲスト・ヤード(1974年製作の映画)
4.1
囚人vs看守でアメフト対決という、刑務所映画とスポーツ映画の良いとこ取り。反骨精神あふれる痛快なストーリーと、アルドリッチの男臭くもキレッキレの映像でエンディングまで突っ走る名作だ。

一長一短の囚人を率いるのは、元スター選手ながら八百長で引退したポール(バート・レイノルズ)。反則すれすれのアイデアを画策し、囚人たちはここぞとばかりに日頃の鬱憤を爆発させる。看守側も汚い手段を連発、試合はラフプレーだらけの意地のぶつかり合いへと発展する。

作戦を練り、騙し合い、体を躍動させる。もちろん失敗もあるが、この試行錯誤そのものが精神的自由であり、人間らしい誇り。「スポーツ」という縛りでもって、それを実践してみせる。ポールがある決断をする終盤、本当にベタなシーンだが涙してしまった。

画面分割って落ち着かなくてノイズになる事が多いんだけど、今作の躍動感たっぷりの編集はハマっている。「円陣を下から撮る→ポールが指示し、選手がフィールドに散る」。この繰り返しで試合のテンポが作られていく。

ポールが八百長した理由を美談として確定させず、人が死ぬシーンでも湿っぽい心情描写はない。ここぞの演説も実に簡潔。試合後も最小限の描写で締めている。

発言を録音させる刑務所の所長は、ウォーターゲート事件の渦中にあったニクソンの風刺だろうか。戦いの場に立つ資格は、年齢でも人種でもなくガッツの有無にある。囚人チームで負傷退場した2人がその証明だ。

看守のレントゲン写真まで手に入れて弱点を突く徹底ぶりに笑った。82点。
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