逃げるし恥だし役立たず

武器よさらばの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

武器よさらば(1957年製作の映画)
3.0
イタリア軍の志願兵として第一次大戦に参加したアメリカの青年フレデリック・ヘンリー(ロック・ハドソン)が自分の理想と懸け離れた戦争の実態に失望して、知り合った看護婦(ジェニファー・ジョーンズ)と共にスイスへの逃避行を決意する。第一次世界大戦下の北イタリアでめぐり逢ったアメリカ兵とイギリス人看護婦の悲恋を描いた戦場ラブロマンス。イタリア戦線の従軍記者だったアーネスト・ヘミングウェイの体験をもとに書かれた同名長編小説の原作を元に戦争の引き起こす矛盾を描いた反戦映画。
第一次世界大戦中のイタリア戦線でイタリア軍に志願したアメリカ人義勇兵フレデリック・ヘンリー中尉(ロック・ハドソン)と赤十字のイギリス人看護婦キャサリン・バークレイ(ジェニファー・ジョーンズ)とが恋に落ちる前半の展開はテンポが良く、険しいアルプスの山道を登るイタリア軍の姿や激烈を極めたドイツ軍とのイゾンツォ河畔の戦闘による戦友との離別、山岳地帯での敗退からの戦列の混乱、反逆罪の名の元に銃殺されるリナルディ軍医少佐(ヴィットリオ・デ・シーカ)など戦争映画らしいシーンはあるにはあって一応は反戦映画になっている。互いに結ばれる激しい雷鳴の中の温室から晴天下の出撃の雑踏での別離、夜の冷雨に中のマジョーレ湖から美しいロカルノの奥地への逃亡劇、雷雨の中での連合軍のドイツ本国総攻撃の報道と帝王切開手術後のキャサリンとの死別、ラストの朝の雨の中で街に向かって歩くヘンリーなど、常に戦雨に死の恐怖を感じていたキャサリンの運命を暗示する印象的なシーンもあるのだが、個人的にはヒロインのジェニファー・ジョーンズに魅力を感じられず、重傷を負って護送された病室で酒瓶片手にいちゃついて叱られたり、湖に船を浮かべてのデートや競馬場での妊娠の報告などに戦時下の緊張感が無いのが致命的で、後半のスイスへの逃避行以降になると平和な天地の中での男女の甘い日常を描く典型的なメロドラマの展開となってしまう。
戦争を描きながらも其処には戦争の悲惨や迫力も戦争に翻弄される運命への苦悩や葛藤も存在せず、フレデリック・ヘンリー中尉の戦争への強固な意志と理想・武器を捨てる決意までの葛藤、非常に印象的な神父と主人公との哲学的な対話、リナルディ軍医少佐との看護婦キャサリンを巡る友情などが映画では通り一遍なのは辛い限りで、此の作品が文豪ヘミングウェイの名作に忠実であるワケもなく、原作者ヘミングウェイとも原作の芸術性とも全く関係がない、名作文学の映画化の典型例と云う筋だけ追った単なる甘ったるいラブロマンスを二時間半越えでダラダラと見せられたという印象が拭えない。
高校生の時に是の映画から読書感想文を書いたが、先生からは呆れられる程に原作とは懸け離れているらしい…まあ再提出した『戦場よさらば (1932年)』も相当違うらしいが…