ビターチョコ

銀河鉄道999のビターチョコのレビュー・感想・評価

銀河鉄道999(1979年製作の映画)
4.5
銀河鉄道999である。
銀河である。
この映画の舞台は宇宙なのである。
公開は1979年なのである。
当時は庶民にとって、事務用コンピュータも(任天堂の)ファミコンも何もなかった頃である。もちろんCD(コンパクトディスク)がある筈もなく、音楽を聴くならアナログレコードとカセットテープの時代だったし、日本の子供たちにとって松本メカ(松本零士が描くメカ)は最先端だったのである。

当時の日本は、漫画もアニメも松本零士ブームだった。大ヒットしたアニメ映画『さらば宇宙戦艦ヤマト』の公開が前年の1978年で、松本零士ブームは冷めることなく続いていた頃、この『999』は劇場公開されたのである。

だから『999』は大ヒットした!

いまウィキペディアで知ったが、パンフレットの売上げが105万部だったそうだ(凄い!)。まだアニメが「テレビまんが」と呼ばれた時代で、「アニメ」と言っても一般には(ほとんど)通じなかった頃である、今の中年たち(40代)でも信じられないだろうが。

月刊アニメージュ(徳間書店)の創刊は1978年から。表紙は宇宙戦艦ヤマトだった。つまり松本零士がアニメ業界を変えたと言っても誰も文句は言わないだろう。アニメージュ創刊に手塚アニメは関与していない筈だからである。
では本題の『999』の話を始めたい!

●あらすじ
母親を機械伯爵に殺された少年「鉄郎」が、機械伯爵に復讐するため、そして機械の体を手に入れるため、謎の美女と共に「機械の体をタダでくれる星」に行く、銀河鉄道999号に乗って……、だが!?

●松本ワールド
この映画には、松本零士の情熱がいっぱい詰まっている。主人公の少年は作者である松本の分身だろうし、旅に同行するのは美女のメーテルだ(美少女ではない)。そしてトチローとハーロックとエメラルダスである。

私は全てのキャラを知った上で観たから、各キャラの関係がよく分かっていたが、そうじゃない観客は意味が分かったとしても、思い入れがないから「それが何か?」だったのかもしれない。上映時間は120分以上。私は退屈することなく観れたが、各キャラを知らない人達はどうだったのだろう。ぜんぜん分からないし、(私には)どうでも良いことだ。

さて、以下はネタバレなので、観ていない人はさようならだ!

●ネタバレ
主人公の少年鉄郎は、母の仇(かたき)に復讐する前に、ある男の母親と会う。なぜ会ったのか。ストーリー上で必要なのだが、そんなことは関係ない。松本ワールドにとっては必然なのである。母親からある物を受取るが、それがないと『999』は成り立たない。
なぜこの映画にハーロックが出てくるのか。エメラルダスが出てくるのか。全ては「ある男」が核になっていて、その人物は鉄郎よりもっと「作者松本の分身」なのである。

ストーリー構成が完璧だし、台詞も演出も音楽の使い方もサイコー!だった。松本ワールドを知っている人には「各キャラの思いの全て」が分かるし、それを言葉で説明しないところが堪らなく良いのである。

が、あの台詞がある。
「男には・・・」
まさに松本零士の世界である。
女には全く分からない世界だろう(俺的にそう思う)。

●余談1
作画については、スタジオバードの三人、友永氏、そして金田氏がメインで関わっているから、作画だけでももう堪らない。音楽も素晴らしいし、もちろん声優のキャスティングも完璧で、(私にとって)文句の付け所がない、ただスタッフとキャストを信頼して「映像と音」を楽しめば良い素晴らしい映画なのである。

●余談2
この映画、意外に女性ファンが多いようだが、女性が好きな要素が全くない気がするから、私にはとても不思議である。
以上、このへんにしたい。

と言いながら、まだつづく!
●余談3
映画『風の谷のナウシカ』の公開は1984年で、その作画監督は小松原一男氏である。なぜ小松原氏なのか。小松原氏が、松本アニメのキャラクターデザインと作画監督を多数していたからだろう。
当時は宮崎駿監督の名前は誰も知らなかったが、小松原氏なら、
「999とハーロックの作画監督ですよ」
「じゃあ安心だね」
というやりとりがビジネス的に出来たからと推測する(憶測だけど)。
とりあえず以上だ!

●追記(2024/04/27)
上の余談3で、「宮崎駿監督の名前は誰も知らなかった」と書いたが、私の場合、1979年公開の『カリオストロの城』が企画される前から私は宮崎駿のアニメという事で、「カリ城」をすごく楽しみにしていたのである。

1979年はもう45年も前だ!
1979年以前の私にとって、宮崎駿氏はアイドルだった。彼は1941年生れだから当時38歳だったわけだが、年齢なんて関係ない。アニメや漫画の優秀なスタッフたちは、私にとってアイドルだった。松本零士も宮崎駿も私のアイドルだった。