ベイビー

ラストエンペラー/オリジナル全長版のベイビーのレビュー・感想・評価

4.6
ああ、美しい…

今作を最後に観たのが十数年前。今になっても時々この作品のワンシーンや音楽やセリフが急に蘇ることがありました。

ですから今回の連休の良い機会に、約3年振りにTSUTAYAに行って、久しぶりにレンタルしてきました。

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栄華からの没落。

僅か三歳の子供が皇帝になり、母親から離され、外へ出る自由も失われ、紫禁城での軟禁まがいな生活に日々嘆く溥儀。

滑稽な伝統と茶番な日常。けれども彼が居る紫禁城での世界では、我こそは皇帝であり、我こそが絶対なのです。誰も彼には逆らえません。

しかし紫禁城の壁の外では情勢が目まぐるしく変化しています。そして溥儀も時代に翻弄され、やがて戦争の道具として担ぎ出されることになるのです…

前半は、紫禁城から出られない生活。そして後半は、戦犯として監獄所に入れられた生活。紫禁城で溥儀は"人ではない、天の子だ"として育てられ、監獄所では"お前はただの人間だ"と叩き込まれた日々でした。

結局溥儀の人生は、どこに居ても自由がなく、存在を否定され続けた人生とも言えます。時代に翻弄されながら、自由の居場所を探し彷徨い続けるのです。

これは、"天の子"が人間に還る物語。

全く意図せず、本日は平成最後の日。今上天皇が退位された歴史的な日であります。

勿論、退位されたからとは言え、今上天皇が溥儀のように一般人となられるわけではありません。明日からは上皇陛下となられるわけです。

ですから、今作と天皇の退位を重ねて話すのも不適切かもしれませんが、個人的には今作を観た後に「即位礼正殿の儀」を拝見させていただき、感慨深い思いが込み上げてきました。

だいぶ話が逸れてしまいましたが、今作は激動の時代に翻弄された、溥儀の60年を描いた壮大なドラマ。

その人生を丁寧に描いた演出は本当に見事で、映像も豪華で美しく、紫禁城を中心としたロケやセットも圧倒するスケールで魅了されます。

そして何と言っても音楽がいい。坂本龍一さんが手掛けているから贔屓目で言うのではなく、僕が観てきた全作品ひっくるめても、トップクラスで好きな映画音楽。

音楽で物語のコントラストをしっかり付けてくれて、そして何より美しいのですから物語が綺麗に引き立って見えます。

まあ、映画あるあるで舞台が中国にもかかわらず全編英語で会話されていることに違和感を感じましたが、それ以外は完璧に近い作品でした。

ずっと観たかった作品。今日という日に改めて観ることができて本当に良かったです。
ベイビー

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