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ナイルの娘のベイビーのレビュー・感想・評価

ナイルの娘(1987年製作の映画)
4.0
久しぶりのホウ・シャオシェン監督作品。

タイトルこそ「ナイルの娘」となっていますが、内容はホウ・シャオシェン監督らしさが詰まったやんちゃな男子の群像劇でした。

「ナイルの娘」というタイトルは、日本の漫画(原題:「王家の紋章」)から由来されており、漫画のあらすじは、エジプト留学中にメンフィス王の墓を暴いたキャロルが、呪いによりタイムスリップしてしまうというお話。

この元ネタが本作とどのように関係しているのか、正直言ってよく分かりませんでした。ただ、タイトルの“ナイル”は“時代”という大河の流れを示唆しているように感じられ、シャオヤンという娘はその時代の観測者として物語を導いてくれたと思います。

この作品の時代は近代台湾史に於ける経済成長期真っ只中。若者たちは夜の街に集い、夜通し踊り明かし、ケンタッキーが憩いの場で、ベンツ(ゲレンデ)を乗り回すことが普通になってきた時代。数十年前の貧しさはもう過去のものと言える時代です。

そんな時代で学校に通う主人公のシャオヤン。そして彼女から見る兄、憧れのアーサン、父、妹、おじいちゃん、クラスメイトや先生は、新しく生まれ変わろうとする台湾の怒涛の流れに身を任せ、翻弄されるままに生きているように感じられます。

時代に翻弄される若者たち。そんな彼らの姿と重なる勢いづいた華やかな街。物語が進むに連れ、皆一様にどこか暗い影を落としていくお話なのに、観ていて全く悲壮感が漂って来ないのはとても不思議でした。

ホウ・シャオシェン監督の構図はやはり美しいですね。80年代の台湾の街並もファッションも音楽もどれも時代を感じさせ、特に音楽は今で言う“シティポップ”ど真ん中で、懐かしさと新鮮味な感覚が合わさっていました。

そしてファッションも懐かしさというより恥ずかしさが勝ってしまう、今思えば謎が残る流行が時代を物語っています。スーツ姿の男性全員が吉川晃司みたいに肩パッドを入れて、肩幅をめちゃくちゃ広くしていたのには驚きました。

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