イチロヲ

書を捨てよ町へ出ようのイチロヲのレビュー・感想・評価

書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)
3.5
鬱屈した日常生活に喘いでいる青年が、失敗と挫折の連続に取り込まれながら、自分の殻を破る方法を探っていく。劇団・天井桟敷のミュージカルを寺山修司本人が映像化している、アングラ映画。

「これって寺山っぽいよね」という言い回しを定着させることになった、記念碑的作品。故郷からのドロップアウトと都会へのアダプテーションを主軸にしながら、その玉石混交とした状況を、メタ的映画術で語っていく。

雑踏の中にチンコ型サンドバッグをぶら下げるゲリラ撮影、婀娜っぽい緋襦袢姿で主人公の筆おろしに挑む娼婦(新高恵子)、ひたすらワキ毛を気にする男娼(丸山明宏=美輪明宏)など、一癖も二癖もあるシークエンスが矢継ぎ早に展開される。

言い訳がましいドラマを2時間以上の長尺で見せられることになるが、寺山自身が「非行少女ヨーコ」に出演したときのニヒルな独白と、安保闘争直後のやる気ナッシングな空気感を大事にしながら鑑賞すると、感慨深いものがある。
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