イチロヲ

悪魔の往く町のイチロヲのレビュー・感想・評価

悪魔の往く町(1947年製作の映画)
4.5
見世物一座の花形芸人から読唇術の手管を奪い取った青年(タイロン・パワー)が、一座で知り合った新妻と共に詐欺まがいの行為に手を染めていく。自我が膨れ上がっている男の顛末を描いている、サスペンス映画。

読唇術ショーで人気を博している女芸人のパートナーが、主人公との接触後に死亡したところから始まるグロテスク・ショー。自尊心の膨張により「オレがオレが状態」に陥っている主人公が、功績と罪過が蠢く、因果応報ワールドを渡り歩いていく。

主人公が見世物一座から厄介払いされると、自身の読唇術ショーを知らしめるべく、怪しい霊能者へと変身。お布施を懐に収めていく展開では、「霊能者と詐欺師は表裏一体」「霊能者は絶対悪なのだろうか?」という普遍的命題が生きてくる。

後半部に入ると、主人公のイカサマ行為がブーメランのように返ってきて、精神不安定に陥っていく。簡単にコロッといってしまう脳みその不思議と、頭がオーバーヒートしている人間の生態を、俯瞰視点から眺めることができる。
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