逃げるし恥だし役立たず

ヒドゥンの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

ヒドゥン(1987年製作の映画)
3.5
寄生体を転々と変えつつ残虐行為を繰り返す凶悪なエイリアンを追う謎のFBl捜査官とロサンゼルス市警の刑事の闘いを描いたSFアクション。
ロサンゼルスで、順法的な生活を送っていた一般人ジャック・デヴリーズ(クリス・マルキー)が、突然凶悪犯に変貌し、銀行強盗をするという事件が発生する。事件を追うロサンゼルス市警の刑事トム・ベック(マイケル・ヌーリー)の前に、FBI捜査官ロイド・ギャラガー(カイル・マクラクラン)と名乗る男が現れるが、ロイド・ギャラガーはトム・ベックに何が起こっているのか語ろうとしない。不可思議な雰囲気を持つロイド・ギャラガーに疑念を抱くトム・ベックだが、二人は協力して多発する凶悪事件を追うのだった…
第十六回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭で『ロボコップ(1987年)』を抑えグランプリ受賞(因みに第一回グランプリが『激突!(1971年)』)の、SFとホラーとアクションの要素を巧みに取り入れたストーリーを、スピーディな演出で一気に観せる1980年代の傑作SFアクション。
ロスの街中で大音量のハードロックを鳴らしながら爆走するフェラーリの追跡シーンから始まる怒涛のオープニングの決まり具合、疾走感溢れるカーアクション、不死身のエイリアン、次から次へと増える死体、B級映画のセンス充分な脚本とテンポの良い演出は、ダレるところが全くないのは流石で、SFホラーであるのと同時に、刑事映画によくあるバディ物として観てもよく出来た映画である。金と女と車と銃とハードロック、挙句に地位と名誉が大好きという俗世的で映画のツボを心得ているエイリアンの設定もユニークで、温厚的な紳士ジャック・デヴリーズ(クリス・マルキー)、重態患者のジョナサン・ミラー(ウィリアム・ボイエット)、ストリッパーのブレンダ・リー(クラウディア・クリスチャン)、愛犬を通してベックの上司ジョン・マスターソン(クラレンス・フェルダー)、ベックの同僚クリフ・ウィリス(エド・オロス)、果ては次期大統領候捕ホルト(ジョン・マッキャン)たち乗り移られるキャラクターがどれもイカしており、明らかに挙動不審で分かりやすい。当時は凶悪犯罪事件や未解決事件って実はコレじゃないの?なんて思ったりしたし、イロモノ映画に出まくったカイル・マクラクランって実は宇宙人じゃないの?なんて思ったりもした。
如何にも80年代ぽい映画で、内容も安っぽくて結構スカスカというか強引すぎるストーリーだが、それらを捻じ伏せるテンション、細かいところまで配慮された演出力、そして透徹した破壊と殺戮、ファンタジーに辿り着くラストシークェンス。ロジックなど全く寄せ付けない説得力は『ターミネーター(1984年)』を連想させて、B級映画の大作映画に対する対抗意識のようなものを感じさせる見応えのある作品である。
昔は日曜洋画劇場で放送される度に、皆んなにバレない様に何時もコッソリ観ちゃう…ホントに凄く面白いんだから!