Toineの感想文

去年の夏 突然にのToineの感想文のネタバレレビュー・内容・結末

去年の夏 突然に(1959年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

【真実は小説よりも奇なりってやつ】
以前U-NEXTさんで配信されていましたがやらかし(見逃し)ましたのでディスクをレンタルして鑑賞いたしました。

テネシー・ウィリアムズ氏の戯曲を「探偵スルース(1970)」の名匠マンキウィッツ氏が撮ったスキャンダラスなサスペンス。
規制の厳しかった当時のハリウッドでこのような作品を発表する反骨精神に痺れました♡
マンキウィッツ監督が取りあげるテーマと先見の明が本当に好き!

舞台美術も大変良かったです。
とくに叔母邸の温室が美しかった。
食虫植物の餌やりシーンが可愛かったです。
ラスト回想の死神を彷彿とさせる黒服ドクロの演出も不気味で素敵だなと思いました。

食い違う叔母と姪のお話。
叔母は何かを隠してる様子だし姪は精神病院に入院させられ叔母の依頼でロボトミー手術を受けさせられようとしている。
担当医が姪の話を聞く内に彼女は精神異常ではないし誰にも打ち明けられない秘密を抱えていることに気付く。
会話劇で真実を探って行くストーリー。
物語の進行が少し「蛇の穴(1948)」に似ています。
しかも姪御さん役が大好きなテイラー様でしたので彼女のカットを何度も繰り返しガン見させて頂きました。
眼力が美し過ぎて私の目も幸せ♡
叔母さん役のキャサリン・ヘップバーン様の意地悪キャラからのラストカットの異様に落ち着き払った狂った演技も素晴らしかったです。

会話劇だから難解かなと心配しながら観ましたが安定に丁寧に撮られているため再鑑賞せずとも物語が理解できて非常に助かりました。
ブルジョワの一見華やかな母と息子が実は近親相姦で更に息子は同性愛者。
尻軽だと思われていた姪のテイラー様は息子の獲物(男性)を誘き寄せる餌として"女の魅力"を利用されていた。
去年の夏、例によって男性をハントするために姪を連れて旅へ出た息子。
その旅行時に心臓発作で亡くなったと思われていた息子でしたが本当の死因はある島で原住民族に食べられ絶命したと言うぶっ飛んだ真実。
それを告白するラスト20分のテイラー様の迫真の演技は必見です。
結局、叔母も息子可愛さに姪を利用し都合が悪くなったら狂人扱いしてロボトミー手術を受けさせ彼女を"本物の廃人"にしようと計画していたと言う事ですよね。
理不尽すぎる。人間怖いよおお((( ;ᯅ; )))

1950年代に同性愛、近親相姦、カニバリズムのコンボが詰め込まれた映画ってなかなか無いのではないでしょうか?
近親相姦とカニバリズムは今も禁忌ですね。
しかし同性愛については私個人にとっては普通の事ですけれど当時はあれだけ固く口を閉ざして秘密にしなきゃいけなかったのかあ…と、現代とは全く違う時代背景も勉強になりました。

物凄く遠回しな同性愛の表現方法を観てジョセフ・ロージー監督作品「召使(1963)」を思い出しました。が、あちらの作品は60年代なのでこちらの作品はやっぱり先陣を切ってますね。
批判を恐れずタブーに斬り込んで行く勇気のある人達が時代を変えて行くのだなと感慨深い気持ちになりました。
超リスペクトでございます。