アキラナウェイ

ギター弾きの恋のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ギター弾きの恋(1999年製作の映画)
3.7
【ウディ・アレンを観よウディ!】

ジャズの調べに酔い痴れて。

「博士と狂人」で、久し振りにショーン・ペンの演技に圧倒されたので、ショーン・ペン主演のウディ作品をチョイス。

ジプシージャズの天才ギタリスト、エメット・レイについて、業界人が語るドキュメンタリー風。ウディも登場。エメットは架空の人物ながら、この手の作りは現実と虚構の狭間に迷い込む感覚が心地良い。

1930年代、ジャズ全盛期のシカゴ。崇拝するギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの演奏が世界一で、自分は2番目に天才だと信じているエメット・レイ(ショーン・ペン)。自信家で、女遊びを繰り返すエメットは、友人と興じたナンパを通じて、口のきけない女性ハッティ(サマンサ・モートン)と出会い、気まずさを感じつつも惹かれていく—— 。

役者だなぁ。ショーン・ペン。

エメット・レイというクセの強い役ながら、その小難しい性格も、ショーン・ペンの立ち振る舞いや表情の機微で、何の違和感もなく受け入れられるのが凄い。

ちょっと気に入った女性と知り合ったら、「貨物列車を見に行こう」と「ネズミを撃ち殺しに行こう」の二択しかないデートコースってどうなの?前者はともかく後者は、どの女性も「これ、面白いの?」と、途端に帰りたそうにする。悪趣味でしかないデートコースから、彼が如何に女性の扱いに慣れていないかがよくわかる。

口は立つけど、思いの外不器用なんだよね。

それでも、ギターの腕前は流石の一言で、ギターを爪弾くショーン・ペンの姿に思わず見惚れる。

口がきけないハッティを演じたサマンサ・モートンの所作が何とも可愛い。よく食べるし、意外にセックスには積極的だったり。

口がきけないと知って、「ハズレ」だと感じていたエメットが、予想以上に彼女にハマり込んでいく展開が微笑ましい。

虚勢を張ってばかりのエメットが、月のオブジェに腰掛けてステージ上に降り立つ演出を思い付くも、その高さにビビりまくるシーンがまた面白い。

ジャケ写みたいにカッコ良くはいかないね。

上流階級の女性ブランチ(ユマ・サーマン)と出会い、エメットはハッティを捨て、ブランチと結婚するも、お互いに派手で見栄っ張りという共通点しかない2人は、次第にギクシャクし始める。

ウディ・アレンお得意の、ほろ苦い大人の恋模様の終幕。呆気ない程にサクッとこんな締め方が出来るのは、彼ならではのセンスだし、毎度感心してしまう。