よーだ育休中

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

4.0
突如リトル・ウィンジングに現れた吸魂鬼がHarry(Daniel Radcliffe)と彼の従兄弟であるDudley(Harry Melling)を襲撃。守護霊の呪文でこれを撃退したHarryだったが、『未成年魔法使いの制限に関する法令』に違反したとして魔法省の懲戒尋問へ出廷するよう命ぜられる。《不死鳥の騎士団》によって救出されたHarryは《闇の帝王》が《前回は持っていなかった何か》を欲していると知らされる。

Either must die at the hand of the other for neither can live while the other survives ...


◆ Then everything went cold as though all the happiness had gone from the world.

C.Corombus、A.Cuaron、M.Newell...
名だたる監督たちが手がけてきたシリーズの五作目にして、遂にDavid Yates監督にメガホンを渡ります。J.K.Rowlingが生み出した魔法ワールドを題材とする今作以降の映像作品は、同監督によって撮影されることになります。

D.Yates監督による魔法ワールド作品の第一号が『不死鳥の騎士団』であったことは非常に良いタイミングでした。15歳を迎え、思春期×反抗期まっ只中のHarryたちを取り巻く雰囲気。《闇の帝王》が復活したことによって暗雲垂れこめる魔法界。そして始まる魔法戦争。

前任者たちが作り上げた魔法ワールドを、よりダークに研ぎ澄ませたのがD.Yates監督の素晴らしい点であると思います。重苦しい雰囲気は勿論ですが、戦闘シーンにおける《魔法の表現》が特に洗練されていました。従来の作品とは異なる映像表現を取り入れる事で《神秘部の戦い》はテンポがよく、緊迫感のある、より《戦場》然としたアクションシーンに仕上がっていました。ファンタジーの要素も惜しみなくつぎ込まれており、ただの戦争映画になっていない点も素晴らしい。

畳み掛けるように《魔法省のアトリウム》で繰り広げられた作品内屈指の大魔法使いによる決闘も見応えがありました。互いの魔力量もさることながら、両者の想像を魔力に乗せて創造する発想の柔軟さと瞬発力の高さにド肝を抜かれます。


“何もかもが冷たくなって、まるで世界から
全ての幸せが消えてしまった様だったー。”

吸魂鬼の襲撃の様子を魔法省の大法廷で証言したMrs.Figg(Kathryn Hunter)の台詞は、暗黒の時代が鎌首をもたげ始めた作中の世界観とリンクしていたように思います。


◆ I mean, it's sort of exciting, isn't it?
ー Breaking the rules.

闇の帝王が復活したとはいえ、Harryたちが学舎たるホグワーツで過ごす学生生活が描かれているのが今作の(そして次回作までの)良いところです。

今作では15歳という年齢における少年少女たちの《抑圧に対する反発》そして、前作からほのかに漂い初めたロマンスの香りが少しずつ高まる《恋愛模様》が《生徒たちの自発的な行動=ダンブルドア軍団》を通して描かれていた点が注目すべきポイントでありました。

恐怖心ゆえに闇の帝王の復活を認めようとしない魔法省大臣は、「魔法省転覆を企む者が闇の帝王復活という嘘を吹聴している」と歪んだ解釈をこじつけます。世論を味方につけるべくジャーナリズムを捻じ曲げてHarryやDumbledore(Michael Gambon)を社会悪と断じ、遂には自身の権力を行使して教育現場へ政治介入を行います。

権力による抑圧に対して、Hermione(Ema Watson)が発起人となり、より実践的な『闇の魔術に対する防衛術』を学ぶ場として《ダンブルドア軍団》を結成。自分たちの考えを形にして、盛り上げて、成果を出す。寮の垣根を越えて、学年を超えて学生たちが友情を育みます。Harryの甘酸っぱいファーストキスを含めて、初々しさと若々しさが溢れていました。

学生団体による影ながらのレジスタンスと取り締まる側とのコミカルな攻防から、双子のたくらみによる鬱屈としていた感情の爆発。勧善懲悪の結末には胸がすく思いでした。ムカつく教師という小物の憎まれ役が身近にいたからこそ、うわずみの平和を享受できていたのでしょう。シリーズ屈指の嫌われ者であるUmbridge上級次官を演じたImelda Stauntonに拍手。


◆ You are just as sane as I am.

『炎のゴブレット』と同様、原作小説の文量は『賢者の石』『秘密の部屋』『アズカバンの囚人』の二倍ちかくであるにも関わらず、映像化作品の尺はいずれの作品よりも短く纏められていました。前作『炎のゴブレット』と同様に上下巻から成る原作小説の物語の本筋のみを抑えて、枝葉となるサブストーリーを切り落としているからに他ならないのですが、上手く纏まっていたと思います。半分以上の内容を削ぎ落としても違和感はありませんでした。

︎︎︎︎☑︎ RonとHermioneが監督生に選出
︎︎︎︎︎︎☑︎ 占い学の後任教授にケンタウロス
︎︎︎︎︎︎☑︎ 聖マンゴ魔法疾患障害病院の患者
︎︎︎︎︎︎☑︎ Ronのクィディッチ・チーム加入
︎︎︎︎︎︎☑︎ Choの友人である密告者Marietta

切り取ってしまっても問題は無いシーンが多いけれど、尺をもう少し伸ばせば入れ込めたんじゃないかなっていう設定もあったり。

五作目である『不死鳥の騎士団』で初登場にも関わらず、物語の中心人物となるキャラクターたちも印象的なスクリーン・デビューを飾りました。

︎︎︎︎︎︎☑︎ Luna Lovegood(Evanna Lynch)
レイブンクロー寮の不思議ちゃん。

︎︎︎︎︎︎☑︎ Bllatrix Lestrange(Helena Bonham Carter)
闇の帝王に心酔するデスイーター。


一方、タイトルにもなっている《不死鳥の騎士団》メンバーのKingsley Shackleboltや七変化Nymphadora Tonksはちょっと弱かったかも。

原作では『賢者の石』から登場していたプリベット通りのご近所さんMrs.Figg(Kathryn Hunter)が実はスクイブ(魔法使い生まれのマグル)だったと明かされた時の感動はバッサリ。映画版『賢者の石』から未登場ゆえにここはやむなしですが。


◆ Look at me!
ー What's happn to me?

闇の帝王との間に絆が出来てしまったことで、精神的に不安定になってしまっているHarry。彼の異変を察して意図的に距離を置いている校長に憤りを感じ、親友の心配も彼の神経を逆撫でするのみ。


The more you care,
The more you have to lose.
So maybe it's just better to go it alone.

“大切に思う程、失うことになる。
だから一人で居る方がマシなんだ。“


何もかも上手くいかず投げやりになってしまうHarryでしたが、名付け親のSirius(Gary Oldman)、聡明な校長Dumbledoreの導きによって精神的な成長を遂げます。


We've all got both light and dark inside us. What matters is the part we choose to act on. That's who we really are.

“誰しもが光と闇を抱えている。
重要なのはどちらを選び行動するかだ。
人はそれで決まる。“


It's not how you are alike.
It's how you are not.

“どれほど似ているかでは無い。
どれほど異なっているかだ。“


That even though we've got a fight ahead of us, we've got one thing that Voldemort doesn't have.

Something worth fighting for.

“たとえ戦うことになったとしても、僕達にはヴォルデモートが持っていないものがある。

戦う価値のあるものだ。“



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さーきとよーだのハリポタマラソン。
物語はどんどん闇深く…。原作小説を読んだ時もそうだったけど、魔法省で彼が《ベールの彼方に》消えて行ってしまったシーンは辛すぎた…。

ダンブルドア軍団のメンバーが銘々の守護霊を召喚してるシーン。自分はどんな守護霊なんだろう。無料診断してみたら《ミニチュアダックスフント》でした。