ベンジャミンサムナー

山猫リュシュカのベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

山猫リュシュカ(1921年製作の映画)
4.5
 ライブ演奏付き上映会二日目!

 アレクシス中尉のモテ具合が異常!
画面を埋め尽くさんばかりの子供たちが「さよなら!パパ!」とお見送り。って、どんだけ子沢山なんだよ!

 本作の最大の魅力はヒロインであるリュシュカのチャーミングさ!
 ボサボサの髪で野暮ったい感じで一見可愛く見えない。
 だが、屋敷に忍び込んできらびやかなドレスを着たり香水を頭からかぶったりしてこっそり不器用におめかししたり、夢の中で中尉とランデブーしてる間、何度も激しく寝返りを打ってもはや『エクソシスト』の悪魔に取り憑かれた少女の如く身体をビタンビタンさせたりと、山賊としての豪胆さがありながらちゃんと乙女なところもあるのがなんとも可愛らしい。
 夢の中にでてくる妖精(?)が『もののけ姫』のこだまとベイマックスを足して割ったみたいな見た目してる。

 滂沱の涙で川ができるという最後の最後に最大の爆笑ポイントを持ってきてからのほっこりENDは、コメディ映画として完璧な終わり方。
 その直前が、リュシュカが中尉から手を引いて山に帰ってくるという切ない場面だったので、その落差が効いてる。
 
 最初から最後まで各々のキャラの描写や感情表現の仕方が漫画のような過剰さで楽しい。
 
 フレームを奇抜な形にする演出の作劇上の必然性はそれほど感じられなかった。

 かつてテレビでチャップリンやキートンの作品を観てサイレント映画で笑う事を経験したが、「サイレント映画で劇場が笑いに包まれる瞬間」を目の当たりにすると「ああ、この映画には本物の"力"があるんだなぁ」と実感する。

 古い映画とはいえ、こんなに面白いのにDVDが出てないどころかウィキペディアのルビッチ監督のフィルモグラフィーに記載されてないのはどういうこと??