しゅうへい

エスターのしゅうへいのネタバレレビュー・内容・結末

エスター(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「この娘、どこかが変だ。」
原題『Orphan』=孤児

死産を経験し、その悲しみから立ち直れない女性。見かねた彼女の夫は、養子を取ろうと提案する。そして夫婦は孤児院でエスターという少女と出会い、養女に迎え入れるが、それを境に周囲で奇妙な出来事が起き始める。エスターは恐ろしい本性を隠していた。

ある家族に養子として引き取られた美少女エスターが巻き起こす惨劇を描くホラー作品。ホラーとはいえ、サイコスリラー色の強い傑作。

成長ホルモンの異常で容姿が9歳で止まってしまい、いつまでも周りから子供扱いされ、愛に飢え欲求が抑えきれなかった結果…。不信感を抱き始める里親家族、容姿や持ち物を揶揄う同級生。彼女を取り巻く環境が彼女をそうさせた。とはいえ彼女の残虐性は仕方ないでは済まされない。

後天性のサイコパス。自信過剰で魅力的、自己中心的で自分の利益が最優先、人を支配する能力に長けている。良心が欠如し、極端に無責任。また才能に恵まれ、アーティスティックな一面も。全てが彼女に合致している。でも彼女は自分の居場所を見つけようと必死で、ただ愛されたかっただけ。

クライマックスのお決まり展開は『チャイルドプレイ』を観ているかのよう。演出やカメラワークも意識してたように思える。片手にナイフ、切り傷だらけの顔、異常なまでのしぶとさ、氷池に沈んでエンド。これが“小さな悪魔との死闘”の最適解だったのかも。

エスターは天使。沼ってどうぞ。もっと愛情を。
里親家族の心配と同時に、いやそれ以上にエスターの魅力に取り憑かれた。こんな感想を言うものだから、昔友人と一緒に観た時「寝てた?」と聞かれたのを覚えてる。自分だったら本性を知ったとしても、上手く利用される道を選ぶと思う。サイコパスが題材の作品『悪の教典』蓮実聖司、『火の粉』武内真伍、そして至高の存在であられるハンニバル・レクター。皆大好きで憧れに近いものがある。こりゃ参った。

あの哀れな悪女を12歳で演じ切ったイザベル・ファーマン。役者として評価されても、世間のイメージはエスターそのもの。少女になんて役をやらせたんだ。あの大人と子供の表情の使い分けは忘れられない。前日譚を描く続編の製作が始まるや否や、監督に直談判し続投が決まったと聞いた時は嬉しかった。

13年振りの続編『エスター ファースト・キル』を観る前に復習。続きが楽しみで仕方ない。今作の内容はインパクトに欠けるけど、エスター/イザベル・ファーマンの存在がこの評価に繋がった。
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