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極私的エロス 恋歌1974のIMAOのレビュー・感想・評価

極私的エロス 恋歌1974(1974年製作の映画)
4.0
原一男は昔『ゆきゆきて神軍』を昔観ていたけど、あまり好印象を持てないでいた。だが色々とメディアなどで彼の人柄が出てくると、意外と興味深い人であるのはわかってきた。なので、今回この『極私的エロス・恋歌1974』をトーク付きで観る事が出来たのは本当に良かった。

かつての恋人・武田美由紀とは付かず離れずの関係だった原一男。美由紀は、原との間に出来た子ども・零を連れて沖縄に旅立つと決意する。「映画を撮ることでしかもう、彼女と繋がっていくことは出来ないだろう。だから私は武田を主人公に、映画を撮る」――そう決意した原は、沖縄に向かうのだが…

この映画は当時の「ウーマン・リブ」の影響化にあった作品ではあるだろう。そうした世相もあるが、何よりもこの作品は武田美由紀という人物と原一男のコラボレーションだとも言える。(もちろんそれ以外にも、登場する人物たちの影響無くして、この作品はなりたたない)
ドキュメンタリーも多く手がけた撮影監督のたむらまさき(田村正毅)はかつて「表現したい人を撮ってこそ面白いのであって、ただの監視カメラでは面白いものは撮れない」というようなことを語っていたが、ドキュメンタリーに限らず映画(や写真)は、撮りたい人と撮られたい人がいてこそ成り立つメディアだ。(そういう良好な関係がない映画もあるが、その場合後々色々と問題が起きる事がある)
そういう意味で、この武田美由紀は確信犯的に原一男を挑発している。その事はトークショーでも原自身が語っていたことでもあるが、これはある意味武田主導の企画でもあったのだ。だが、そこで晒される武田の姿に原も誘導されてゆき、原自身もこの映画で自らを晒してゆくことになる。そのあからさまな自身の姿が「恥ずかしくて」原はこの映画だけは観返すことが出来ない、と語っていたのが印象深い。確かに倫理的な問題含めてこの映画は今では撮ることが出来ないだろう。だが、それだけにこの映画は、この時にしか捉えられない貴重なものが写っていて、歴史的な一本だとも言えると思う。
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