つかれぐま

続・夕陽のガンマン/地獄の決斗のつかれぐまのレビュー・感想・評価

4.5
24/4/8@新宿ピカデリー❷
4K復元版(2024):178分

「人間には二種類あってな」

マカロニウエスタン代表作、セルジオレオーネ最高傑作、そしてタランティーノのオールタイムベスト。

タイトル、プロットともにB級映画の素材を、決まりまくった構図とモリコーネの音楽というA級の手仕事で磨きあげるとこんな傑作になるという、若き日のタランティーノが熱狂したであろう「超B級映画」だ。タランティーノ作品に触れたことで、こういう映画の楽しみ方が分かったかも。

1966年の公開当時は、まだシネマスコープが新鮮だった時期。ちょうど今のIMAXのような、新時代のアスペクト比として世界の映画作家たちが試行錯誤していた頃に、レオーネはその最適解を出したのではないか。極端なアップとロングショットを交互に見せることで飽きない作りだが、これがシネスコの良い所を十二分に引き出す。

荒野を疾走する馬を捉えたロングショットは、言うまでもなく映画の華だよな。ロケ地はスペインだそうだが、赤い大地と砂漠は19世紀のアメリカ大陸そのもの。

むくつけき野郎どもの顔、顔、顔。
群がる蠅までも捉えたアップが続くが、顔の左右に青い空が抜けてくれるから観やすかった。幅の狭いビスタやスタンダードだとこうはいかない。先週観た『オッペンハイマー』も顔面の映画だったが、IMAXの画角で観るアレは少し息苦しかったのは否めず。

時代は南北戦争。
カネのことしか考えていない3人の悪党が「大義」のための戦禍の中を縫うようにして走り、逃げ、闘う話だ。本作のキラーフレーズを借りれば、さしづめ「人間には2種類あってな。カネが大事な奴と、大義が大事な奴だ」というところか。面白さ優先の娯楽度99%映画だが、どちらが本当の人間の姿か?そこに思いを馳せるシーンも。3人の中で最も人間臭い(ねずみ男のような)イーライ・ウォラックが実質主役なのも面白い。

長尺なのでダレる時間帯もなくはないが、代わりに観たいものは全て見せてくれた印象。自分は劇場で観る場合「大は小を兼ねる」主義なので無問題だ。