Ricola

魅惑の巴里のRicolaのレビュー・感想・評価

魅惑の巴里(1957年製作の映画)
3.7
スクラップブックみたいなオープニングから気持ちが高まる。
そんなオープニングからバリバリのミュージカル映画なのかと期待していたら、意外にもサスペンス色のある作品であった。


シビル、ジョイ、アンジェルという3人の元踊り子の女性とバリー・ニコルズという座長である男性の4角関係?が暴かれていく。
シビルの書いた暴露本に対して、アンジェルは名誉毀損で訴える。
法廷で語られるそれぞれの言い分が回想とともに描かれる。
なるほど、この複数の視点による語りの形式は黒澤の『羅生門』と同様だという。(Wikipedia情報)

みんなそれぞれ嘘はつくし、その嘘が人を傷つけるものであったりむしろ救うものであったりする。
しかしそこには皆真実も含んでいるから余計に厄介なのである。

新聞売りのおじさんの掲げる"What is the truth?"という看板が、それぞれの言い分の主張のあとに、法廷を出た外で強調されるのが皮肉である。

でもそういったサスペンス的な側面は、この作品のコメディ、ミュージカルとしての側面を全く邪魔することはない。

彼女たちが踊り子で、バリーが取り締まってツアーをするため、バックステージ型のミュージカル作品でもある。
そこで披露される豪華な衣装と華々しいダンスと歌も楽しい。
特に中世ヨーロッパ風の衣装でのパフォーマンスがかわいかった。
それぞれの回想による違いも、ここのシーンで特に比較しやすかった。

女性同士の友達間あるあるなトラブルが鮮やかにコミカルに描かれており、華やかなミュージカルシーンが時折装入される。
法廷での証言台から回想へと「移動」するときは、カメラが横へと動き、法廷からそのまま過去へと遡る際に場所までスライドしたようなスムーズな場面転換が面白い。

サスペンス、コメディ、ミュージカルと多面性があり、軽く楽しく観られる娯楽作品だった。
Ricola

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