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ガスパール/君と過ごした季節(とき)のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

4.4
優しさに包まれ、温かい気持ちになりました。家族に捨てられた人たちが一つ屋根の下で暮らす。貧困を描く社会派の作品もありますが、幸福の王子のようなロビンソンと、実は面倒見のよいガスパールが出てくる現代のおとぎ話はより心を打ち、より善意が沁みます。

原題は「ガスパールとロビンソン」。最初、幸福の王子のようなロビンソンが主役かと思いました。ロビンソンが家族に捨てられたおばあさんジャンヌを連れてきたことを、同居しているガスパールは怒ります。そんな余裕はないと。ロビンソンはキツネに襲われてはいけないと、ガチョウやニワトリも家で保護していました。

ロビンソンもまた家族に捨てられた過去をもち、困っている人を見つけるアンテナが鋭く、人の痛みや辛さをなんとかしてあげようとします。

以下、内容にふれています。

ガスパールは厳しいしつけだったと自分ではいうけれど、恵まれた家庭環境で育ち、そのしがらみから自由になりたかったと言います。ユダヤ人を屋根裏に匿っていた家族でした。また妻には逃げられています。世の中をわかっているガスパールは、助けたい半分、それは簡単ではないと思う半分、良心と常識があり、先々を見据えていました。

そんな寂しい二人は一つの目標、海辺のレストランオープンに向かっていたところに、可愛いおばあちゃんジャンヌがやって来て、三人の珍・共同生活がはじまります。

邦画の『ビーチ・ボーイズ』を彷彿させるロケーションで、海、砂浜、ラグーンや海辺の小屋の風景は美しく、色彩の柔らかい映像は、温かくもあり寂しくもありました。

隠れた貧困がテーマだった「万引き家族」は、厳しい貧困を描いていたのに、疑似家族の絆が注目されていました。人はネガティブなことに目を瞑りがち。本作もほぼ「万引き家族」なのですが(錠前の会社に勤めていた二人は鍵の束を持ち…)、悲壮感を抑え、疑似家族の温かさが強調されています。そのため、かえって貧困の中にいる人の貧困や弱い立場にフォーカスが当たったと感じました。

ガスパールに優れたリーダーシップを感じます。犬も🐕️
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