夜行列車に乗ったカリート

羊たちの沈黙の夜行列車に乗ったカリートのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
3.6
ジョナサン・デミ監督。
猟奇殺人を軸に人間の異常性に切り込んだホラー作。アカデミー賞5部門受賞という怪物映画。

FBI訓練生クラリスは連続殺人犯・バッファロービルを捕えるため、収監中の精神科医かつ食人鬼であるレクター博士に情報提供を求める。犯人逮捕を急ぐあまり博士に近づきすぎてしまうクラリス、果たしてどうなるか…というストーリー。

全体的に陰鬱な空気が漂っていて、一見すると気持ち悪いんだけれど最後まで面白く見れてしまう、そんな映画。
その理由はやっぱり、レクター博士が変に魅力的なキャラクターということでしょう。
本作に登場するバッファロービルのことを「こら~この変態め~」とは思っても、レクター博士を「腐れ外道食人鬼」、と思うことは少なめです。

知的で博学・物静かな佇まいで、プロファイル能力に長けるレクター博士。
訓練生クラリスにとってレクターは、食人鬼という訳分からん奴だけど優秀な精神科医…という位置付けです。

彼女は過去に起きた出来事によって、自らの心の傷=「羊たちの鳴き声」に悩まされていました。それをレクター博士によって見抜かれ、助言を受けることでそのトラウマを克服、結果として羊たちは沈黙します。
ここで患者と主治医みたいな関係性も出来上がるんですね。おまけに犯人逮捕まで出来てしまうもんだから捜査員としても、レクター博士はもはや師匠です。
この主人公との関係構築が、レクターを単なる猟奇殺人者ではないことを示す表現に繋がっています。

あと博士が、人間を衝動的に食べてるわけではない所も要点ですね。
人肉を食べたい衝動に駆られる人は、単純に「味がうまいから」というわけではないでしょう。宗教的観点や性欲・愛欲、必要に迫られて…といった理由を思い付きますが、博士の場合は「あいつに嫌なことされたな~、ムカつくし食っちまおう…」という報復心のようなものから来ています。

無礼な奴しかマトにしないわけですよ。この点がバッファロービルや、どっかの膵臓を食べたい人とは違うわけですね。

あとはクラリスが優秀すぎる問題ですかね。地元警察にバンバン指示出ししたり、自ら聞き込み調査したり、まだ学生という立場にも関わらずすげぇ行動力。
とりあえず新卒で入ってきた新入社員でこんな奴がいたらすげぇ…というか、まずビビります。

まぁ、もっと心理描写とかを深掘り出来る映画なんですけど、表面的に見ても構成が上手いので面白と思います。
この作品もそうですが、猟奇殺人者の心理に触れたがる奴っていますけど、要はアハ体験ですね。

そんな映画でした。