継

キャラバンの継のレビュー・感想・評価

キャラバン(1999年製作の映画)
4.0
ドルポ村のリーダー, 長老ティンレはキャラバンの事故で後継者たる息子を亡くす。
村民の多くは次期リーダーにカルマという若者を推すが, 息子の死をカルマのせいと邪推するティンレはこれに猛反発, 末っ子(or孫?)のまだ幼いツェツェンを擁立して自身がその後見人にならんと画策するー.

'99年作品, フランス, ネパール, イギリス, スイス合作。
原題はズバリ『Himaraya』.
主に麦を, 加えて生活物資を得る為に険しい山を幾つも越えてひたすら塩を運ぶ大行軍, キャラバン。

ドルポとは、ネパール西部の, 北はチベットとの国境(山岳地帯)、他の三方もヒマラヤの高峰に囲まれた最深奥部に位置する小村。標高5000㍍を超える高地にあり, あまりに遠隔過ぎて人の居住に適さず, それ故にチベットなどと違って中国から干渉を受けずに現存する “天空の村”。
テレ朝の深夜にナスDがこのドルポを目指す番組をやってて, ご存知な方もいるかもしれません。

'83年にネパールへ移住した監督・脚本のエリック・ヴァリは何千頭ものヤクを率いた大キャラバンに遭遇してドルポの地とそのキャラバンを知ったとか。
現地の人々との長きに渡る交流やネパール政府の協力を取り付けて完成に漕ぎ着けた本作は, 登山や巡礼ではない「生活の場」としてのヒマラヤで繰り広げられる, 叙事詩的な人間ドラマを描かんとしていました。


占いで出発に相応しい吉日を選ばんとする悠長な習わしを否定し, 冬が到来する前にと,反対を押しきってキャラバンを出発させるカルマ。
一方「ツェツェンでは幼すぎる」と賛同を得られなかったティンレは, その兄で現在は僧侶となったノルブを後継に,と僧院を訪ねるもあっさり拒絶されて帰還。カルマが吉日を待たずに出発した事を知らされる。

リーダーの誇り, カルマへの意地... ティンレは, 村に残る年老いた男達を強引に率いてキャラバンに出発, リスクを伴う近道, 通称“悪魔の道” を何とか乗り越えた強行軍は先行するカルマ隊へ追いついてみせる。

疲労を考慮し野営していたカルマ隊の一行は僅かな時間で追い着いたティンレ隊に驚きを隠せない。合流し当然のように采配を奮うティンレは, 占いにより休憩を取らず山越えを続ける(*`Д´)ノ!!!と主張しまたもカルマと衝突するが, ティンレのカリスマと“神の信託”に従って生きてきた村民一行はこれを信じて出発する。
やがて吹雪に見舞われる行軍。無理が祟ったティンレは腰まで雪に埋もれたまま意識を失う。。。


世代間の軋轢、新旧交代。
なるようにしかならない結末がそれでも胸を打つのは, その道程で見せられる普遍的物語とヒマラヤの圧倒的な景観、そして雄叫びを挙げてキャラバンを率いる, 老いてもなお血気盛んなリーダー, ティンレの存在によるところが大きいです。
一際目立つティンレの, 全身白毛に被われたヤクが何とも神々しい姿に見えたのが印象的でした。
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