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パリでかくれんぼのnetfilmsのレビュー・感想・評価

パリでかくれんぼ(1995年製作の映画)
4.3
 今回のジャック・リヴェット特集も3本全てが3時間余りと長尺で、それなりに覚悟がいるのだがこれが一番楽しい。去年の『デュエル』と『ノロワ』はかなり内容的に厳しく、こちらにもアップしなかったはずで、今回の3本は押し並べて去年以上のクオリティだがその中でもやはりこれを一番に推したい。5年の昏睡状態から目覚めたルイーズ(マリアンヌ・ドニクール)と覚せい剤のプッシャーを辞め、普通の配達員となったニノン(ナタリー・リシャール)。それに物心ついた時から養子で、本気で母親を探す図書館司書のアイダ(ロランス・コート)のの三者三様の日常をパリの中で綴って行く。パリに暮らす3人はところどころで生活圏が被りながら、それぞれの在り様を知らないから気にも留めない。お婆ちゃんが残してくれた家という遺産を相続をしながらも、過干渉な父親(声の主は明らかにリヴェット組のラズロー・ザボー!!)の熱意をうんざりしながら聞いているルイーズも、盗みを働いた時に情熱的なキスをされ、その気になってしまったローランド(アンドレ・マルコン)の気持ちをのらりくらりと交わそうとする二ノンと三角関係となり、いつしか2人は友情を結ぶ。

 音楽映画というか極めてミュージカル的な今作にはクラブの歌手としてエンゾ・エンゾが登場し、3人の女性たちの気持ちを代弁するかのように情感豊かに歌い上げる。現実というかファンタジーがごちゃ混ぜになるようなリヴェットの空想世界の中で、奇妙に捻じれたダンスを踊り出す。3人ともに異なる男性がストーカーの様に張り付いているが、最後には男どもの欲望を束ねる様に、3人の秘密を握るマクガフィン役として舞台美術家のローランドがぬっと顔を出す辺りも絶妙で、ジャック・リヴェットは本当にのらりくらりとしながらも、唐突に核心を突いて来る。図書館での横移動の図鑑コーナーのアイダの癇癪とか本ずらしとかは明らかにアドリブで、何ならナタリー・リシャールとマリアンヌ・ドニクールの階段でのくんずほぐれつなダンスのやりとりもヘタクソだが、その捨て鉢さが妙に心に残る。今回は完全版と銘打っていて、オリジナルよりも10分長い完全版となっているが、いったいどこが10分長かったのかは皆目見当が付かないのだが、やはり多幸感が最高な映画である。
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