ちろる

もうひとつの世界のちろるのレビュー・感想・評価

もうひとつの世界(1998年製作の映画)
3.8
知らなかった作品だけど、タイトルとジャケットになんだか惹かれて・・・
純粋で真っ直ぐな修道女を演じたマルゲリータ・ブイがとにかく美しい。
人生を神に捧げる儀式前に、今までに感じたことのないもうひとつの自分に触れて葛藤していくカテリーナの繊細な表情の演技が印象的です。
シスター研修時期を終えようとするカテリーナは偶然捨てられた赤ん坊を拾ってしまった事で自らの微かな母性を知り、同時に今後結婚や出産ができない現実と直面することになる。
もうひとりの主役はクリーニング店の中年オーナー、エルネスト。
見た目はなかなか冴えないおっさんであるが、このおじさんのセーターに赤ん坊が包まれていた事で2人の奇妙な交流が始まるのだが、このありえない出会いから2人の絆ができるまでの過程がとてもナチュラルで淡々としているのにとても引き込まれる作品だった。
正直観ている最中はかなりベタな展開を予想、、というかちょっと期待してしまった私がいるけれど、そこはさすがイタリアの作品。
なかなか現実的で辛辣な部分も入れ込んできた。
この物語にはいくつかのコミュニティが登場して、この赤ちゃん騒動がなければ決して互いに交流のなかった人々なのだが、それがこの騒動で少しずつ互いのコミュニティに関わるようになる。
私たちは同じ境遇や社会的立場の間だけで生活が回ってしまい、それだけで人生終えてしまってもいいと思ってしまいがちだけど、こんな風に神様のちょっとした悪戯で、知らなかった世界、知らなかった価値観に触れ合うことがどれだけ人間の成長にとって尊い事なのか思い知らされる。
どんな出来事も、どんな別れも無駄なものは何一つない、切ない気持ちもあるけれど、柔らかい空気が連鎖して優しい気持ちにもしてもらえた良作でした。
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