革芸之介

アリスの革芸之介のレビュー・感想・評価

アリス(1988年製作の映画)
4.2
幻覚剤が入った注射器を頭にぶっ刺されてトリップ状態で観る幻想的な悪夢。しかし甘美でポップで摩訶不思議なグロテスクファンタジー。本作に対する、不気味、気色悪い、気持ち悪いという言葉も全部褒め言葉になってしまう圧倒的な世界。

ルイス・キャロルが、もし天国でこの映画見たら絶対に「これこそが、俺が書きたかったものだよ」って悔しがって泣いちゃって生き返ってしまうかもしれないぐらいシュヴァンクマイエルは独特な映像を作ってしまった。

視覚ドラッグ的な中毒性がある本作にはサイケデリック感覚が満載で奇妙な博物館や遊園地に迷い込んでしまったのかと錯覚してしまう。目が気持ち悪いウサギは常に時間を気にしているが、はたしてこの世界に時間は存在するのか?永遠の無限ループが続く悪夢の迷宮なのではないのか?

そして本作の「唇」映画としての側面も見逃せない。ウサギや奇妙な生き物のセリフをアリスがナレーション的に代弁するのだが、そのたびにアリスの口元がアップになる。少女の唇アップの連続に密かなエロスと背徳的なフェティシズムを想起してしまった。
革芸之介

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